ニュース速報

ビジネス

フィアットとPSAの統合合意、欧州の労組が雇用への影響懸念

2019年11月01日(金)08時23分

 10月31日、経営統合で基本合意した自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA) と仏PSAに対し、欧州の主要労働組合は人員削減や工場閉鎖を回避するよう訴えている。写真はイタリアのトリノにあるFCA工場に設置された産業用ロボット。7月11日撮影(2019年 ロイター/Massimo Pinca)

[パリ/ミラノ 31日 ロイター] - 経営統合で基本合意した自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA) と仏PSAに対し、欧州の主要労働組合は人員削減や工場閉鎖を回避するよう訴えている。域内経済が失速するなか、統合を巡る労働者側の懸念が浮き彫りになった。

PSAとFCAは31日、対等合併に向けた作業を進めることで合意したと発表した。経営統合が実現すれば、世界4位の自動車メーカーが誕生する。[nL3N27G35E]

独最大の労組IGメタルは、PSAが2年前に買収した独オペルの自主独立経営の維持を求めると表明。

PSAとFCAは、経営統合に伴う工場閉鎖は計画していないほか、現在の取り決めでは2023年半ばまではオペルの従業員を解雇する可能性はないとしている。

ただ、アナリストは両社の欧州の工場はブランドの重複や一部の稼動率が低いという問題があるため、見直しの目が向けられると予想する。

FCAのイタリアにある低稼働の工場は約5万8000人の従業員を抱えており、同社全体の社員の4分の1以上を占める。

オペルが本社を構える独ヘッセン州のフォルカー・ブフィエ首相は「PSAがオペルとその研究開発センターを維持し、(オペル本社がある)リュッセルスハイム工場に投資するよう期待する」と述べた。

オペルは2019年上期に18年ぶりに黒字化を達成。ただ、同社のセダン「インシグニア」の販売不振を受け、リュッセルスハイム工場は今年、生産台数を6万8000台に半減させ、労働時間の短縮も開始しているため、現在の従業員数を維持する必要性について疑問が浮上している。

英最大の労組ユナイトは、今回の経営統合合意と英国の欧州連合(EU)離脱を巡る不透明感は従業員を「非常に不安にしている」と訴えた。

PSAは英国内の2カ所に工場がある。

イタリアの大手労組の1つ、FIOM(勤続労働者組合)・CGIL(労働総同盟)の自動車部門従業員責任者、ミケーレ・デパルマ氏はロイターに「FCAとPSAの統合の可能性については、日産・ルノーの統合の時に比べて2倍の懸念がある。FCAのイタリア工場の先行きを案じている」と述べた。

また、FIOM・CGILとフランスの労組、CGT(労働総同盟)は31日出した発表文で、従業員や労組に相談せずに両社が統合交渉を進めると決定したことは「受け入れられない」と表明。両労組が協力して欧州域内の雇用や研究開発および生産施設を守ると表明した。

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

赤沢氏、日本が失うのは「数百億円の下の方」 対米投

ワールド

上海でAI会議開幕、中国の李首相は世界的な協力組織

ビジネス

NASA、職員の20%が退職へ=広報

ワールド

タイとカンボジアの衝突3日目に、互いに停戦と交渉開
MAGAZINE
特集:山に挑む
特集:山に挑む
2025年7月29日号(7/23発売)

野外のロッククライミングから屋内のボルダリングまで、心と身体に健康をもたらすクライミングが世界的に大ブーム

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や流域住民への影響は?下流国との外交問題必至
  • 2
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心中」してしまうのか
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 5
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 6
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 7
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 8
    レタスの葉に「密集した無数の球体」が...「いつもの…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「電力消費量」が多い国はどこ?
  • 10
    機密だらけ...イラン攻撃で注目、米軍「B-2ステルス…
  • 1
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 2
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心中」してしまうのか
  • 3
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や流域住民への影響は?下流国との外交問題必至
  • 4
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 5
    「カロリーを減らせば痩せる」は間違いだった...減量…
  • 6
    レタスの葉に「密集した無数の球体」が...「いつもの…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「マシンに甘えた筋肉は使えない」...背中の筋肉細胞…
  • 9
    参院選が引き起こした3つの重たい事実
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 6
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 7
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 10
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中