ニュース速報

ビジネス

焦点:長期金利急上昇、日銀緩和の限界意識 プラス圏浮上の声も

2016年08月02日(火)19時01分

 8月2日、日本国債の利回りが急速に上昇(価格は急落)している。日銀がマイナス金利付き量的・質的金融緩和の効果を総括的に検証する方針を29日に公表し、3次元緩和の限界が意識され、市場の一部では国債買い入れ減額への警戒感さえ浮上した。写真は日銀の看板、3月撮影(2016年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 2日 ロイター] - 日本国債の利回りが急速に上昇(価格は急落)している。日銀がマイナス金利付き量的・質的金融緩和(QQE)の効果を総括的に検証する方針を29日に公表し、3次元緩和の限界が意識され、市場の一部では国債買い入れ減額への警戒感さえ浮上した。

日銀緩和に依存してきた反動との見方もあるが、政策の先行き不透明感が残ったままでは、10年最長期国債利回りがプラス圏に浮上する可能性も指摘されている。

<10年債入札が金利上昇に拍車>

金利が急上昇する中で行われた2日の10年債入札。警戒感が強まる一方で「先物は前週の高値から短期間で2円以上も調整しており、自律反発しても不思議ではない」(証券)との声も市場で少なからずあった。

しかし、結果は予想を超える不調。好不調の判断材料となる平均落札価格と最低落札価格の開き(テール)は、27銭と2015年3月以来の大きさとなった。

連日の急落相場で損失を被った業者(証券会社)のリスク許容度が、大きく低下しているのではないか──。複数の債券市場関係者はそう指摘する。実際に証券会社からは「実需で確実に落とさないといけない金額を除くと、できるだけ低い価格に流して応札せざるを得なかった」(証券)との声が漏れてきた。

入札結果を受けて金利上昇は加速。10年債は前日比11.5bp高いマイナス0.025%とゼロ%に急接近。5年債は同11bp高いマイナス0.120%、2年債は同9bp高いマイナス0.150%といずれも約4カ月半ぶりの水準を付けた。「一部参加者から中期ゾーンに投げ売りが出たことも、地合いを悪化させた」(同)という。

<過剰な織り込みの反動も>

しかし、円債市場が自らが招いた金利急騰とも言える。マイナス金利付きQQEの下で、円債市場は金利低下や追加緩和を過剰に織り込んできた。

7月28日に行われた2年債入札。平均落札利回りはマイナス0.3610%と過去最低を更新した。マイナス金利政策の深掘りを織り込まないと正当化できない水準だ。

さらに落札不明額が約1.4兆円と発行額(約2.3兆円)の6割を超えた。非公表としている外資系数社分を考慮しても説明できない金額で、日銀追加緩和を見込んで「一部参加者が、かなりの額を落札したのではないか」(国内金融機関)との観測が絶えない。

しかし、日銀は7月29日の決定会合で上場投資信託(ETF)の買い入れ増を決めたものの、一部で予想された国債買い入れ増やマイナス金利幅拡大を見送った。マイナス金利幅拡大を「前提」にしていた一部参加者は、ハシゴを外された格好となった。

日銀は、今年9月に異次元緩和の下での経済・物価動向や政策効果について総括的な検証を行う方針を表明。黒田東彦総裁は定例記者会見で、今後も必要な場合に3次元で追加措置を講じる姿勢を示したが、市場では限界説も根強い。SBI証券のチーフ債券ストラテジスト、道家映二氏は「量と金利の限界を露呈した」との見方を示す。

黒田総裁は2日午後の麻生太郎・副総理兼財務相との会談後、記者団の質問に答え、この日の金利上昇の背景に緩和縮小観測があったのではないかとの質問に、政策効果の検証によって、そういうことにはならないとの見解を示した。

しかし、円債現物市場での反応は限定的だった。

<9月日銀会合までは不安定相場か>

短期的な相場急落後だけに、市場では自律反発をうかがう展開を想定する声もあるが、少なくとも次回(9月20─21日)の日銀決定会合まで金融政策の不透明感がくすぶり続けるとみられている。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券のシニア債券ストラテジスト、稲留克俊氏は、この日の市場変動について「緩和限界論が他市場に比べて強く意識されている債券市場は、総括的検証の表明でフレームワーク修正の思惑が出てきても不思議ではない。国債買い入れの減額やマイナス金利政策の見直し等、引き締め方向の政策を織り込む動き」とみる。

12日には30年債入札を控えており、「短期的にはボラティリティーが高い相場展開」(みずほ証券・マーケットアナリストの辻宏樹氏)となりそうだ。長期金利はプラス水準への再浮上も視野に入ってきたとの声が、市場関係者の中で広がっている。

(星裕康 編集:伊賀大記)

ロイター
Copyright (C) 2016 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

イオン、サンデーにTOB 1株1280円で完全子会

ビジネス

ファーストリテ、26年8月期業績・配当予想を上方修

ワールド

イエメン分離派指導者が出国、UAEが手助けとサウジ

ビジネス

セブン&アイHD、通期純利益予想を2700億円に引
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 5
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 6
    マドゥロ拘束作戦で暗躍した偵察機「RQ-170」...米空…
  • 7
    日本も他人事じゃない? デジタル先進国デンマークが…
  • 8
    公開されたエプスタイン疑惑の写真に「元大統領」が…
  • 9
    衛星画像で見る「消し炭」の軍事施設...ベネズエラで…
  • 10
    「ショックすぎる...」眉毛サロンで「衝撃的な大失敗…
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 5
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 6
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 10
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中