ニュース速報

トルコ、シリア北東部でクルド勢力を攻撃 地域不安定化に懸念強まる

2019年10月10日(木)06時31分

[アクチャカレ(トルコ) 9日 ロイター] - トルコは9日、シリア北東部に侵攻し、テロ組織と見なすクルド人勢力を攻撃した。空爆を行った後、夜に入り地上戦を開始した。欧州など主要国は、内戦が続くシリアの情勢をさらに悪化させ、地域の不安定化につながる恐れがあるとして懸念を募らせている。

トランプ米大統領が同地域からの米軍撤収を表明してからわずか数日後の軍事作戦開始となったことで、米共和党の有力議員からもシリア北部で過激派組織「イスラム国(IS)」掃討作戦で米国に協力してきたクルド人勢力を見捨てたと批判の声が上がっている。

トルコのエルドアン大統領はこの日、シリア北東部でクルド人勢力を標的とした軍事作戦を開始したと表明。ツイッターへの投稿で「トルコとの国境に向けてテロリストの回廊が創設されることを防ぎ、同地域に平和をもたらすことが目的」とし、「シリアの主権を擁護し、地域社会をテロリストから解放する」と述べた。

トルコ政府がテロ組織と見なすシリアのクルド人民兵組織「人民防衛部隊(YPG)」や過激派組織「イスラム国(IS)」からの脅威を排除し、その後同地域に「安全地帯」を創設し、トルコにとどまっているシリア難民の帰還を目指す考え。

トルコ国防省は、夜に入りシリア北部で「地上作戦を開始した」と発表した。トルコのメディアによると、トルコ軍はシリアのテルアビヤドとラスアルアイン近郊の4カ所から越境した。

YPGを主体とする「シリア民主軍(SDF)」によると、空爆によって民間人少なくとも5人が死亡、SDF兵士3人が死亡、民間人少なくとも数十人が負傷した。

ロイターの記者は、テルアビヤドで複数の爆発が発生しているのをトルコ側から確認したと述べた。夜になってからは、ロケット弾がテルアビヤドに向かって発射され、近郊の町で炎が燃え上がっている様子が確認されたという。

CNNトルコの記者は、ラスアルアインでも大規模な爆発があり、建物から煙が上がっていると述べた。

トルコのメディアは、シリア側からも迫撃砲やロケット弾がトルコのセイランピナルやヌサイビンに向け発射されたが、負傷者などの情報は明らかになっていないと報じている。

トランプ大統領はこの日、トルコの攻撃を「悪い考えだ」とし、支持しないと述べた。

エルドアン大統領がクルド人を全滅させることを懸念しているかとの記者団からの質問に対しては、「そうなれば、私がトルコ経済を壊滅させる」と応じた。過去に課した対トルコ制裁に言及し、「過去にも壊滅させた」とした上で、「エルドアン氏が理性的に行動することを望む」と述べた。

トランプ大統領の米軍撤収の決定を巡っては、自身の共和党内からも批判が相次ぐ。

トランプ大統領に近い共和党の重鎮リンゼー・グラム上院議員は、クルド人勢力を支援しないことは「大統領の任期中最大の過ち」と非難した。同党のリズ・チェイニー下院議員も「米国は同盟を結んでいたクルド人勢力を見捨てた」と批判。トランプ大統領の決定が「米国の敵国ロシア、イラン、トルコを支援し、IS復活の下地を整えることになる」と述べた。

トルコによる攻撃について、ドイツ政府は地域のさらなる不安定化につながり、ISを強化することにもなりかねないと懸念を表明した。

国連安全保障理事会は欧州諸国からの要請を受け、10日に非公開の緊急会合を開く。報道官によると、グテレス国連事務総長はシリア北東部の情勢を「深く憂慮」し、「軍事的な解決策ではシリア内戦を収束できない」との考えを示した。

ユンケル欧州委員長は欧州議会で、欧州連合(EU)がトルコの安全地帯創設に資金を提供することはないと言明した。

シリアのアサド政権の後ろ盾とされるロシアとイランも、シリア北東部での情勢の収束に向けた行動を促した。ロシアはシリア政府とシリアのクルド人勢力との対話を呼び掛け、イランはトルコに対し軍事行動を控え自制するよう促した。

為替市場ではトルコリラが対ドルで0.5%下落し、主要な支持水準とされる5.85リラを割り込んだ。

*内容を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国万科、債務再編計画を準備 BBG報道

ワールド

マクロスコープ:中国の輸出管理強化、自民党内に反発

ワールド

インタビュー:中国の対日認知戦、当局の強い影響示唆

ワールド

ロシア、新型ミサイルでウクライナ攻撃、大統領公邸攻
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 5
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 6
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 7
    「不法移民からアメリカを守る」ICEが市民を射殺、証…
  • 8
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 9
    トランプがベネズエラで大幅に書き換えた「モンロー…
  • 10
    マドゥロ拘束作戦で暗躍した偵察機「RQ-170」...米空…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 5
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 6
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 7
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 8
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 9
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 10
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中