ニュース速報

焦点:外為市場、異例のボラ低下は「嵐の前の静けさ」か

2019年07月07日(日)10時57分

[ロンドン 27日 ロイター] - 外為市場はボラティリティが極めて小さい状態が続いている。金融機関のトレーディングルームは閑古鳥が鳴き、ノムラの欧州外為セールス部門の責任者が代わりに債券をセールスするほどだ。しかしベテラントレーダーの間では世界金融危機前の状況を彷彿させるとの声も聞かれ、今は「嵐の前の静けさ」かもしれない。

ドイツ銀行の通貨ボラティリティ指数<.DBXVIX>は2017年以降低下傾向が続いて4年半ぶりの低水準となった。同指数は今年初めの3分の2程度に落ち込み、3年前に付けたピークの半分に満たない。

ボラティリティの低下は相場変動の少なさを映している。各国中銀は10年来の景気刺激策をさらに続ける見通しで、長期金利が再びゼロに向かって主要通貨間の金利差がまた縮小する可能性もあり、外為離れは長引きそうだ。

外為市場の反応の鈍さを明白に示したのが、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が追加利下げの可能性を示唆して市場に衝撃を与えた18日の金融市場の動き。総裁発言でドイツの10年物国債利回りは過去最低を更新、フランスの10年物国債は初めてマイナス圏に沈み、欧州株は2%上昇したが、ユーロ/ドルは0.4%の下落にとどまった。

貿易戦争や景気後退の懸念から米連邦準備理事会(FRB)が緩和姿勢に転じたにもかかわらずユーロ/ドルは10月以降、1ユーロ=1.10─1.16ドルの範囲に収まり、値幅は4%強にすぎない。一方、米国債はボラティリティが2017年4月以来の水準に上昇した。

ドイツ銀行の外為共同ヘッド、ラッセル・ラスカラ氏は「FRBは完全に復活し、金利は大きく動いているが、その流れが外為市場には及んでいない。眠り込んだままだ」と述べた。

問題は、2008年3月のように、この異例の静けさに混乱が終止符を打つかどうかだ。このときは前年のほとんどを7以下で推移していたドイツ銀の通貨ボラティリティ指数が12以上に急上昇した。

ユーロ/ドルの1年物インプライドボラティリティは1月の8近くから6に低下し、今のところそうした兆候はない。

しかしボラティリティの再上昇を引き起こす政治的、経済的な不透明さには事欠かず、市場の行動様式の変化がいずれ迎える終焉の種をまいているかもしれない。

例えば、トレーダーの多くはボラティリティが低い状態が続くと利益が手に入る投資戦略を取っており、予想外のボラティリティ上昇で損失を被る恐れがある。

ドイツ銀のラスカラ氏は「非常に危険度の高い戦略だ。もっとも、これまで4年間は有効だったのだが」と話した。

ボラティリティ低下で債券や株式の運用担当者は、損失発生に備えるヘッジも減らしている。ラスカラ氏によると、円は長らく安全な通貨と目されてきたが、昨年12月の株価急落の際には上昇幅が小さく、トレーダーの多くは以来、ヘッジ目的の円買いを中止したという。

(Tommy Wilkes記者、Tom Finn記者)

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ニューヨーク市営食料品店1号店、イーストハーレムに

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、米イラン交渉再開巡り期待感

ワールド

世界経済、中東の戦闘が短期終結なら回復可能=IMF

ワールド

イラン停戦交渉再開の可能性「非常に高い」=国連事務
MAGAZINE
特集:台湾有事の新シナリオ
特集:台湾有事の新シナリオ
2026年4月21日号(4/14発売)

地域紛争の「大前提」を変えた米・イラン戦争が台湾侵攻の展開に及ぼす影響をシミュレーション

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米軍の海上封鎖に中国が抗議、中国タンカーとの衝突リスク高まる
  • 2
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 3
    高さ330メートルの絶景と恐怖 「世界一高い屋外エレベーター」とは
  • 4
    日本は「イノベーションのやり方」を忘れた...ホンダ…
  • 5
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 6
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 7
    【銘柄】イラン情勢で「任天堂」が急落 不確実な相…
  • 8
    トランプを批判する「アメリカ出身のローマ教皇」レ…
  • 9
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 10
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 1
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 2
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 3
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで代用した少女たちから10年、アジア初の普遍的支援へ
  • 4
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 5
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 6
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 7
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 8
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 9
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 10
    健康を守るはずのサプリが癌細胞を助ける? 思いがけ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 10
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中