Noriyuki Hirata

[東京 6日 ロイター] - 日経平均は6日、一時7%急落し、約半年ぶりの低水準に下落した。米中間選挙での民主党躍進を受けた人工知能(AI)データセンター(DC)規制強化への思惑が背景だ。先行き不透明感が売りに拍車をかけた側面が意識される一方、過去のAI相場では類似した局面が2回あり、いずれもリバウンド局面が続いたことに着目する声も出ている。

<不透明感が株安を加速>

株価下落を加速させた根底には先行き不透明感がある。「投資家は民主党の勝利が何を意味するか把握しようとしているが、まだ完全には把握できていない」とAMP(シドニー)のチーフエ​コノミスト兼投資戦略責任者、シェーン・オリバー氏は指摘する。

市場のコンセンサスがない中で「不安感があるのは株式市場にとって一番怖いこと」(大和証券の坪井裕豪チーフストラテジスト)でもある。

AI株は高値からの調整が進んできたが、下がれば下値で買われてきた。続落後の急落となったことで、追い証回避の売りといった需給面の売りも加速したとみられる。松井証券店内の信用評価損益率は、前日のマイナス17%程度がこの日はマイナス20%近くに拡大したと同証券の窪田朋一郎チーフマーケットアナリストは推計する。

テクニカル面では200日移動平均線を割り込んだことで下げが加速した一方、評価損益率がマイナス20%と追い証の多発が想定される水準でもあり、短期的なセリング・クライマックスをつけた可能性があると窪田氏はみている。「いったんリバウンドして、200日線を試すことはあり得る」という。

韓国や台湾株の下落も投資家心理の重しとなった一方、米ラムリサーチやマイクロン・テクノロジーといったAI株の一角が時間外取引で上昇に転じ、米ナスダック先物もプラスで推移しており、急速な

下げは一服する可能性がある。

<過去にもPER逆転現象>

足元の株安はパニック売りの側面も意識されている。LSEGのデータでは、SOXの2年後の12カ月先予想EPSは足元から約54%増加する見通しで、S&P500の約34%を大きく上回る。一方、PERをみると、SOXの12カ月先予想PERはS&P500を4.6倍下回っている。

こうしたPERの逆転現象は、直近ではトランプ関税が嫌気された2025年4─5月、中東情勢の緊迫化でリスクオフとなった26年3─4月にもみられた。共通項は「不透明感」だと野村AMの石黒氏は指摘する。不透明感が強まることで投資家がポジションを閉じる動きが広がる「パニック売り」の様相との見方だ。

中間選挙と同時に行われた州知事選挙では、大規模な電力網や広大な土地を抱え、これまでデータセンター誘致の中心地となってきたテキサス州やニューメキシコ州などで、民主党の規制強化派が勝利した。既存のデータセンター開発計画が見直しや遅延を迫られるリスクが意識されている。

一方、SOXの2年後の同EPSが約2割下方修正されるとして、PERも23年以降の下限に近い17倍まで引き下げて試算すると、1万3600ポイントとなる。5日終値の9011ポイントを5割上回る水準となる。

トランプ関税や中東情勢緊迫化によるリスクオフ局面では、市場が落ち着きを取り戻すにつれリバウンドを強め、その後に当時の最高値を更新する動きになった。「下方修正リスクには注意が必要になるが、利益成長が維持されるならAI関連株には見直し余地がありそうだ」と石黒氏はみている。

<アンソロピックIPOが試金石>

松井の窪田氏は「米国株の下げはまだ十分でないかもしれない」と指摘する。投資家の不安心理を示すシカゴ・オプション取引所(CBOE)のVIX指数(ボラティリティー・インデックス)は28まで高まっているが、コロナ禍やリーマンショック時の80超、トランプ関税時の60、中東緊張時の35に満たない。

波乱の火種は尽きない。今月半ばから後半にはAI開発を手掛ける米アンソロピックが巨額の新規株式公開(IPO)を実施するとみられている。同社は米ナスダック市場への上場を準備しており、企業価値は最大2兆ドル、資金調達額は最大1000億ドル規模となる史上最大級の上場案件と報じられてきた。

IPO前には、買付資金を手当てするために他のAI関連銘柄に換金売りが波及する需給悪化のリスクも警戒される。日本国内でも上限35億ドル(約5528億円)で募集すると報じられており、この日の株安にも、そうした投資家行動が波及した側面があるとの見方もある。

当面は、IPOの延期や中止のリスクに加え、2兆ドルともいわれる評価額が引き下がるかどうかもポイントとなる。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は2日、1.5兆─1.6兆ドルとの投資家の見方を伝えた。松井の窪田氏は、データセンター規制強化のリスクへの警戒が強まる中で高い評価額が引き出せるかは不透明との見方を示す。

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