雪に覆われた山々の間に張られた、一本の細いライン。その上を、両腕でバランスを取りながら一歩ずつ進んでいく男性がいる。

足元に広がるのは、地上約150メートルの谷底。ラインの幅はわずか2.5センチしかない。

この命がけにも見える挑戦に臨んだのは、オーストリアのスラックライン選手、フロリアン・ツォラー(33)だ。

10月下旬、オーストリア西部チロル州のスキーリゾート、グルグルで、空中に浮かぶ2台のゴンドラの間に張られたラインを渡る世界記録に挑んだ。

スラックラインとは、細いベルト状のラインの上でバランスを取るスポーツ。高所で行うものは「ハイライン」と呼ばれる。

今回の挑戦が特に難しかったのは、ラインの両端が岩場などに固定されておらず、空中に浮かぶゴンドラにつながれていたことだ。

ツォラーが一歩踏み出すたびにゴンドラが揺れ、その振動がラインにも伝わる。挑戦中、ゴンドラは最大約12度傾いたという。

さらにラインは中央部分で大きくたわみ、ゴールに近づくにつれて急な上り坂になっていた。

それでもツォラーは慎重に歩き続け、15分30秒かけて約144メートルを踏破。従来の世界記録65メートルを2倍以上更新した。

ところが、ゴール直前に思わぬ事態が起きた。

最後の数メートルでバランスを崩し、ラインから落下したのだ。幸い、安全装備によって体は支えられ、地上への転落は免れた。

ツォラーはラインの全区間を渡っていたため、記録は認められた。

本人は現地メディアに対し、最後は体力も精神力も限界に近かったと振り返っている。

ツォラーは17年間スラックラインに取り組み、今回の挑戦を8年前から構想。実現に向けて約1年間の準備を重ねてきたという。

BBC Newsは11月3日、この挑戦の様子を収めた映像を公開。雪山の上空を歩く姿と、最後にバランスを崩す瞬間が映し出されている。

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