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[ニューヨーク 5日 ロイター] - 世界一の富豪で宇宙開発企業スペースXと電気自動車(EV)大手テスラを率いる米実業家イーロン・マスク氏は中間選挙で、連邦選挙だけで約4億4500万ドルもの資金を投入した。だが同氏が後押しした共和党候補の多くは敗北を喫し、結果的にほとんど実を結ばなかった。
下院選では、マスク氏が支援した共和党候補37人のうち当選したのはわずか3人。33人が敗れ、残る1選挙区は5日時点で勝敗未確定だった。上院選でも同氏が応援した共和党候補7人のうち6人が敗北。残る1議席となったアラスカ州の選挙では、開票率78%時点で民主党のメアリー・ペルトラ候補がわずかにリードしていた。
特にテキサス州では、マスク氏は上院選に約2億3000万ドル、知事選に500万ドル、副知事選に50万ドルを投じたが、支援候補はいずれも勝利を逃した。同州はスペースXとテスラの本拠地であり、マスク氏が半導体製造事業を計画している地域でもある。
ボストン・カレッジのデービッド・ホプキンス教授(政治学)は「多くの民主党員はマスク氏を、共和党候補を支える『資金源』の象徴と見なしている。そのため今後、民主党が彼個人をどう扱うかに大きな影響を与えるだろう。マスク氏はトランプ政権に関与してきた上に、彼の企業は政府と深く結び付いているため、特に標的になりやすい」と述べた。
民主党が議会を掌握することで、衛星通信サービスのスターリンクや人工知能(AI)データセンター事業への監視が強化されるとの懸念が広がり、5日の取引ではスペースX株とテスラ株がいずれも大きく値下がりした。
マスク氏の巨額献金は今回の選挙サイクル全体の支出を過去最高水準に押し上げた。ただ、その影響力の全容は不透明だ。政治資金監視団体オープンシークレッツによると、連邦選挙への支出は4億4500万ドル。選挙支出に詳しい関係者によると、非営利団体を通じてさらに数千万ドルを投じた。地元メディアは、州・地方選挙にも数百万ドルを支出したと報じている。
<巨人を倒した>
最近の選挙は、富裕層や企業から無制限の資金を集められるスーパーPAC(政治活動委員会)の台頭を背景に、支出が急増。政治広告調査会社アドインパクトの試算では、今回のテキサス州上院選の総支出額は約5億7320万ドルに達し、大統領選以外では米史上最も費用のかかった選挙となった。
この選挙で勝利した民主党のジェームズ・タラリコ氏は勝利演説で、巨額献金者や既存の政治制度を擁護する人々に対し、権力は国民に属するというメッセージを送ったと述べた。
マスク氏から1億5350万ドル規模の広告で攻撃される標的となったタラリコ氏は、自身とマスク氏の戦いを旧約聖書の「ダビデとゴリアテ」になぞらえて「今夜、私たちはゴリアテを打ち破った」と勝利を宣言した。
今回は民主党候補が少額献金を積み上げて共和党候補を大きく上回る資金を集めることに成功し、共和党は富裕層献金への依存を強めた。
テキサス州知事選で勝利したジーナ・イノホサ氏は、選挙期間中からマスク氏と州政府との密接な関係に疑問を呈しており「アボット知事はボカチカ・ビーチの管理権を最高額入札者に明け渡した。あの海岸は私たちの財産だ」と述べ、スペースXのロケット打ち上げ拠点となっている同地域を巡る問題を争点化した。
イノホサ氏は、マスク氏や関連企業とのやり取りを含む黒塗りのないメールの閲覧を求め、アボット知事の事務所を提訴している。これに対し知事側は控訴中で、報道官はXへの投稿で「この訴訟は根拠のない政治的パフォーマンスに過ぎない」と反論した。
<政治的逆風に直面>
マスク氏は今後、ワシントンでも厳しい政治的逆風に直面する見通しだ。
民主党のロバート・ガルシア下院議員は、企業による選挙献金は禁止されている一方で、企業経営者個人による無制限献金が認められている現行制度を「マスク式抜け穴」と批判し、その是正を目的とした法案提出を計画している。
また民主党は今後、マスク氏とその企業を対象とした複数の議会調査を進める構え。対象には政府効率化省での活動、ウクライナ問題への関与、ロシアとの接触、さらには連邦政府との契約関係などが含まれると想定される。
既に調査の動きも始まっている。民主党議員らは先月、ウクライナ戦争の重要局面でスターリンクの利用が制限された問題について、スペースX、国防総省、ホワイトハウスに説明を求めた。さらに対話型AI「グロック」による不適切画像の拡散、政府効率化省在任中の利益相反、航空宇宙局(NASA)や国防総省との契約関係などについても疑問が提起されている。
選挙結果が明らかになった4日早朝、マスク氏はXに皮肉を込めて「どうやら私の選挙干渉用宇宙レーザーは今回効かなかったようだ」と投稿した。