※トランプ大統領の再就任で、アメリカはどこへ向かうのか。連載「トランプのアメリカはどこへ向かう」では、11月の中間選挙をはじめ、国内政治から経済、外交・安全保障まで、トランプ政権の動向と世界や日本への影響を読み解きます。 

神は6つの性別を創造した。少なくともテキサス州の民主党候補ジェームズ・タラリコはそう信じているらしい。共和党の対立候補ケン・パクストンが公開した新たな政治広告は、そんな主張を展開している。

AIで生成されたこの動画では、タラリコが机に向かって旧約聖書の「創世記」を書き換え天地創造の物語に6つの性別を加えている。しかも、書き換えた聖書には王冠をかぶった自分の肖像画まで描き込んでいる。

なんとも突拍子もない非難だが、その非難を伝えるために用意された場面もまったくの作り話だ。まさに今の時代を象徴する政治広告だ。

11月の中間選挙が近づくなか、アメリカの選挙広告はインターネット上のミームにますます似てきている。内容がばかばかしいほど、人々の注目を集めやすくなるからだ。

しかし、アメリカの政治広告はなぜここまで変わってしまったのか。こうした奇抜な広告が次々と登場するのは有権者を説得するためなのか。それとも、別の狙いがあるのだろうか。

ニューヨーク州知事選では、共和党のブルース・ブレイクマンが、キャシー・ホークル州知事とニューヨーク市のゾーラン・マムダニ市長が一緒に庭仕事をしながら、ニューヨーク州民の生活費を引き上げようと共謀しているかのように描いたAI動画を公開した。

オハイオ州では、AIで作られたシェロッド・ブラウンが誕生日パーティーに招かれざる客として現れ、残り物のケーキを勝手に食べる広告が登場した。

こうした広告は、有権者の候補者に対する印象を変えることを狙っているのだろう。だが、あまりにもばかばかしい内容を見ていると、別の可能性も浮かんでくる。有権者の考えを変えることと同じくらい、広告を見てもらい、拡散してもらうこと自体が重要になっているのではないか。

政治広告は昔から決して上品ではなかった
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