※トランプ大統領の再就任で、アメリカはどこへ向かうのか。連載「トランプのアメリカはどこへ向かう」では、11月の中間選挙をはじめ、国内政治から経済、外交・安全保障まで、トランプ政権の動向と世界や日本への影響を読み解きます。
バーニー・サンダースは長年、億万長者たちを厳しく批判してきた。
2010年12月、バーモント州選出の上院議員だったサンダースは、富裕層向けの減税を延長する超党派の合意に抗議し、上院本会議で8時間半以上にわたって演説した。2016年に大統領選に出馬すると、ほぼすべての演説で億万長者への批判を繰り返すようになった。
しかし、当時のアメリカではサンダースの訴えに耳を傾ける人はほとんどいなかった。世論調査でも、億万長者の存在は有権者にとっても民主党支持者にとっても大きな関心事ではなかった。
米調査会社ギャラップは長年、アメリカが直面する最大の問題について国民に尋ねているが、貧富の格差を挙げる人は約2%にとどまり、その割合は10年以上ほとんど変わらなかった。民主党支持者の間でも、2019年の時点で貧富の格差は重要課題の同率9位にすぎなかった。
フェイスブックが急成長した時代には、テクノロジーの未来に対する楽観的な見方も広がっていた。マーク・ザッカーバーグやイーロン・マスク、ジャック・ドーシーをはじめとするシリコンバレーの著名人は、世間から称賛され、トーク番組や雑誌の表紙にたびたび登場していた。米誌『タイム』は2010年、ザッカーバーグを「今年の人」に選んだ。2021年にはマスクが選ばれ、同年には人気テレビ番組『サタデー・ナイト・ライブ』の司会も務めた。
しかし、テクノロジー業界の大富豪が英雄として扱われた時代は終わった。アメリカでは億万長者に対する反感が強まり、今回の選挙では政治家も有権者の声を無視できなくなった。米政治専門メディア『ポリティコ』の世論調査では、約72%が政治に金がかかりすぎていると回答した。また、億万長者が政治に過大な影響力を持っていると答えた人は61%に上り、2024年の大統領選でカマラ・ハリスに投票した人では75%、ドナルド・トランプに投票した人でも55%に達した。
調査会社ハリス・ポールが2025年に実施した「アメリカ国民と億万長者に関する調査」では、億万長者が民主主義を脅かしていると考える人が53%に上り、前年から7ポイント増えた。