北朝鮮で、またぞろ異様な親子の光景が公開された。

10月29日の無人航空技術展示会で、金正恩総書記と娘の金ジュエ氏らが、自爆ドローンやロケット砲の攻撃実演を視察した。

そこで見せたのは、自爆攻撃に大興奮し、満面の笑みを浮かべる父娘の姿だった。

ジュエ氏も爆笑するなど、まるで遊園地のアトラクションを楽しむかのような振る舞いを見せた。

かつてトランプ米大統領は、金正恩氏を「ロケットマン」と呼び、痛烈に揶揄した。

2017年、米朝が核・ミサイル問題をめぐって激しく対立していた頃のことだ。

そして今、その金正恩氏の娘、金ジュエ氏には、韓国メディアから「ロケットウーマン」という、ありがたくない異名が付けられている。まだ十代前半という年齢を考えれば、「ロケットガール」と呼ぶ方がふさわしいだろう。

もっとも、本人にとっては不名誉どころか、誇らしい称号なのかもしれない。

金ジュエ氏は、父親に付き従って核・ミサイル関連施設や軍事行事に繰り返し登場してきた。

駆逐艦からのミサイル発射を見てガッツポーズ決めたかと思えば、ジャージーにサンダルという、まるで近所のコンビニに出かけるような格好でミサイルを視察したこともある。

もちろん、兵器の実演に満足すること自体は、軍事指導者として不思議ではない。

しかし、破壊と殺傷を目的とする兵器を前に、親子で無邪気にはしゃぐ姿には、何とも言えない不気味さが漂う。

しかも、ジュエ氏は将来、核兵器の発射命令を下す最高指導者になる可能性が指摘されている。

「ロケットガール」が受け継ぐのは、父親の権力だけではない。

世界を脅かす核のボタンも、その相続財産に含まれるのだろうか。
 

(参考記事:【写真】金正恩父娘“恋人のような密着シーン”に北朝鮮内部から「おぞましい」との違和感も)

[筆者]
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)、『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)、『北朝鮮ポップスの世界』(共著、花伝社)など。近著に『脱北者が明かす北朝鮮』(宝島社)。

※当記事は「デイリーNKジャパン」からの転載記事です。
【関連記事】
ニューズウィーク日本版 ルポ ドローン戦争——無人の戦場
2026年11月3日/10日号(10月27日発売)は「ルポ ドローン戦争──無人の戦場」特集。

ドローンが空・陸・海の戦闘を支配する「新しい戦争」をウクライナの最前線で見た

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
※画像をクリックするとアマゾンに飛びます