未利用魚だったブダイを使った「勝浦ブルーバーガー」

獲った魚を食べることも、保全の一部だ。市場価値が低く、利用されにくかったブダイを、同社は「勝浦ブルーバーガー」に仕立てた。郷土料理の"さんが焼き"風と、照り焼きの2種。2025年10月から運営するゴルフ場のレストランで提供を始め、今ではホテルのビュッフェにもブダイ料理が並ぶという。

未利用魚を獲り、藻場を守り、その効果がクレジットになり、獲れた魚は食卓に上る。この流れが生まれたことは、漁業者にとって報われにくかった駆除作業が、意義のある仕事に変わったことを意味する。その手応えを青島氏は次のように語る。

「新たに鵜原地区の漁業者さんも活動に賛同してくれ、駆除の海域は3つに広がりました。これは大きな成果だと思っています」

海藻を増やし、食べ、「勝浦モデル」の確立を目指す

海藻食の魚を駆除することは、藻場の減少を食い止める「守り」の一手である。東急不動産はさらに、藻場そのものを増やす「攻め」の挑戦にも乗り出した。高知大学発ベンチャーの株式会社ウルバと組み、勝浦のカジメやアラメを種苗化して、高水温や食害に強い株を選んで海に戻す実験を進めている。

「外洋の荒い環境でも藻場が戻ると実証できれば、日本全国どの海域でも藻場を増やせることにつながります」と、青島氏は意気込む。

海藻を増やすだけでなく、食べる文化も育てようとしている。2026年9月には、海藻の生産から食の提案までを手がける同じく高知のベンチャー、合同会社シーベジタブルとの共創を発表した。11月下旬には運営するホテルハーヴェスト勝浦で、寿司職人による「海藻寿司」の食体験イベントが開催される。

その先に描くのは、東京・渋谷で海藻の食文化を発信し、持続可能な海洋生態系の回復に向けて関係人口の創出を目指す構想だ。守ってきた海の森が、人を呼ぶための資源となる。

単発の環境活動ではなく、まちづくりで培った多面的な発想を海に持ち込んだ戦略。同社はこの循環を「勝浦モデル」として確立し、磯焼けに悩むほかの自治体へ広げる検討も進めている。

世界に目を転じると、ブルーカーボンのクレジットを生む事業の大半は、マングローブ林の保全で占められている。しかし、この国の沿岸に広く茂るのは、海藻だ。日本は2024年、海藻藻場のCO₂吸収量を世界で初めて国連に報告し、海藻も対象にした独自の認証制度を動かしている。

勝浦の取り組みは、マングローブに偏ってきたブルーカーボンの裾野を、海藻の森へと広げる実例である。町と海ににぎわいをもたらす循環が、勝浦の海から回り始めた。

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