日本企業のたとえ小さな取り組みでも、メディアが広く伝えれば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく――。そうした「発信と共創の場」をつくることをミッションに、ニューズウィーク日本版は2023年春、「SDGsアワード」を立ち上げました。

2026年、私たちはこの想いをさらに深化させ、ビジネスと社会貢献の融合により強くフォーカスするため、名称を新たに、ニューズウィーク日本版「サステナビリティアワード」として、第4回のプロジェクトを始動しました。

先の見えない今の時代にこそ、日本企業のたゆまぬ挑戦とサステナブルなビジネスモデルが、世界に求められています。私たちは今年も、日本企業によるサステナブルな取り組みを発信していきます。

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気象庁によると、この100年余りで日本近海の平均水温は約1.4度上がった。世界平均の2倍を超える上昇幅だ。

水温の上昇は、沿岸に生息する魚を変化させている。南の海に多かった海藻食の魚が増え、冬になっても食べ続けるようになった。その結果、海藻の森である「藻場」が枯れる「磯焼け」が各地の沿岸で進んでいる。

1906年の観測開始以来、一度も猛暑日を記録したことがない町、千葉県勝浦市。太平洋に面するこの町は今、房総半島を西から東へ進む磯焼けの最前線だ。イセエビやアワビを育んできた海藻の森が衰え、漁獲の量も、魚の大きさも落ちてきた。

そんな勝浦の海に、漁業者や行政と協力した取り組みを進める不動産会社がある。別荘地やゴルフ場、会員制ホテルを含む「東急リゾートタウン勝浦」を開発・運営する東急不動産株式会社だ。

同社は2025年5月に、勝浦市と2つの漁業協同組合、県の研究機関などで組織する「勝浦市藻場保全対策協議会」に民間事業者として参画した。藻場の保全を起点に、食、観光、教育へと広がる地域循環づくりを進めている。

美しい海が広がる勝浦屈指の景勝地「鵜原理想郷」

守られた藻場が、不動産会社初のJブルークレジット認証に

設立から半世紀を迎える勝浦のリゾートタウンを、次の50年へどうつなぐべきか。東急不動産は議論を重ねていた。

リゾートは海岸から車で15分の内陸に位置しているが、その未来は、勝浦全体のにぎわいと切り離せない。働き手も食材も、地元に支えられている。改めて行政や地元の関係者に話を聞いて回ると、浮かび上がってきたのは「海藻を食べる魚が増え、漁業が衰えている」という地域課題だった。

長野県の蓼科などで「森」の保全を進めてきた東急不動産にとっても、「海」は未知の領域だ。開発も所有もできない海は、不動産会社には縁遠い場所にも見える。プロジェクトを担当するホテル・リゾート事業本部の青島一樹氏は、こう振り返る。

「正直、最初は戸惑いもありました。しかし、地域の活性化は我々デベロッパーの本業です。今回はたまたまフィールドが海というだけで、根本の目的は変わりません」

海藻を食べる魚の駆除活動を支えるため、駆除した魚を買い取ることを決めた。

協議会による最初の駆除は2025年7月。朝5時に興津港を出港し、海藻を食い荒らすブダイを獲るための刺し網を仕掛け、午後に引き揚げる。青島氏もその船に乗り込み、海の上からプロジェクトを立ち上げていった。

協議会が効果測定の舞台に選んだのは、市の南西部にある興津の海域である。100メートル四方の区画を2つ設け、駆除を行う「活動区」と、行わない「対照区」に分けた。

保護する対象は、コンブの仲間の大型海藻、カジメ。岩場に茂り、アワビやサザエを育んでくれる、海の森の主役だ。空中と水中をドローンで撮影し、カジメの分布と密度をAIで画像解析する。その結果、活動区では藻場の消失が明確に抑えられていることが分かった。

海の生態系が取り込む炭素は「ブルーカーボン」と呼ばれる。この吸収量を第三者機関が認証し、売買できるようにしたのが「Jブルークレジット」だ。協議会の駆除によって守られた藻場は、約0.4トンのCO₂を吸収したと算定され、2025年12月にJブルークレジット認証を受けた。不動産会社が関わるプロジェクトの認証は国内初という。

海藻を増やし、食べ、「勝浦モデル」の確立を目指す