Rie Ishiguro

[東京 30日 ロイター] - 30日午後3時半から予定されている日銀の植田和男総裁の記者会見は、政策金利を1.25%で据え置いた今回の決定を踏まえ、次の利上げが12月になるとの市場の大方の見方をサポートするような発言があるのかが注目される。

日銀は「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)で基調的な物価上昇率が2%の目標とおおむね整合的な水準になったと判断。植田総裁は、前回9月会合後の会見で基調的な物価上昇率を2%目標の水準で安定させていく観点が重要になったとして「政策の局面が変化」したと表現したが、今回の2%到達の判断が今後の政策運営や利上げペースにどのように影響するかについて、何らかの示唆があるのかもポイントとなる。

1.今後の利上げパス

日銀は展望リポートで、金融環境が緩和的であることを踏まえ、経済・物価・金融情勢に応じて引き続き政策金利を引き上げる方針を維持した。

植田総裁は今月16日、タイのバンコクで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中銀総裁会議後の会見で、基調物価が2%におおむね近いということで「これ以上上がるということは容認できない、2%近辺で定着していくということを政策の大きな目標にするという姿勢に、最近局面が変化した」と詳述。

足元の消費者物価指数(CPI)は中東情勢の緊迫化を受けた諸コストの上昇を反映し、伸び率が2%超に加速。日銀が今週発表した税金や補助金など「特殊要因」と生鮮食品を除いたCPIは前年比3.2%上昇に急加速した。

展望リポートでは2027年度の物価見通しを引き上げた。

インフレ圧力が高い状態が続く中で物価目標に到達したのであれば、緩和状態を維持する必然性はなくなるのか。目標到達後の2%での定着度合いの確認が重要という判断は、今後の利上げパスやターミナルレートにどう影響するのか。物価目標到達の政策的意義を植田総裁がどのように説明するのかが大きな注目点になる。

2.「AI周り」の見方に変化あるか

総裁はインフレ圧力に関して円安、中東情勢、人工知能(AI)関連動向を注視する姿勢を示してきた。

ただ、9月会合以降、金融市場ではAIデータセンター関連企業の巨額投資に対する懸念が台頭。米新興コアウィーブなどの株が売り込まれる「コアウィーブショック」が10月中旬に発生し、日本の株式市場にも波及した。一方、安全資産とされる国債は買われ、長期金利が低下した。

9月会合後の会見で総裁は、金融環境について、1)金利、2)銀行貸出、3)株価や為替など資産市場の3つの面からみていると発言。そのうち金利周りは長期、超長期を中心にかなり引き締まっているが、残る2つの波及経路は「少しまだ緩和的」と評価した。

展望リポートでは「株・為替といった資産市場の最近の動向踏まえると、 金融環境は緩和した状態が維持されている」としたが、最近の株価調整を受けて資産価値の緩和度合いやAI周りの動向をどのように分析するのかがポイントになる。

AIをめぐる市場動向に加え、海外中銀の動きを含めた世界的な金融環境の変化への認識も確認したい。

3.中立金利

植田総裁はG20後の会見で、景気を刺激しも冷ましもしない中立金利への距離を問われ、「これまでの利上げの累積的な効果、金融環境や経済・物価へどういう影響が累積的な効果として出てきているかということをみながら、一歩一歩判断していきたい」と語っている。

また、9月会合後の会見では、ターミナルレート(利上げ最終到達点)について、中長期の物価目標を加味した名目ベースでの中立金利に、より短期的に経済・物価を考えてどの程度その水準からずらすのが適切かという判断と、海外の金利などの影響も踏まえて決まってくるとの見解を示した。

日銀スタッフによる自然利子率の推計に基づく中立金利の推計レンジは1.1―2.5%。9月の利上げで政策金利は推計レンジの下限を上回ったが、小枝淳子委員は今月、中立金利は「1%よりは相応に上」と語った。

2%の物価目標に到達したことを受けて、中立金利やターミナルレートへの距離についての判断に影響があるのか、総裁の説明に注目したい。

4.中銀ウイークの相場反応

総裁の発言に対し、為替相場はこれまで連邦準備理事会(FRB)とのタカ派度合いの違いなどを理由に、円安で反応することが多かった。

FRBは28日までの連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を据え置いた。市場は今週の中銀ウイークに際し、日米ともに「タカ派的据え置き」になった場合、どちらがよりタカ派になるかに注目していた。欧州中央銀行(ECB)も29日の理事会で予想通りに金利据え置きを決定した。

9月会合では日銀による予想通りの利上げに対し為替市場が円安で反応したが、今回、1.5%への利上げを主張した高田創委員の反対票や、物価目標到達の判断を受けて、日銀の方がタカ派度合いが強いと見なされる可能性もある。

同時に、高市早苗首相がこのところ「脱リフレ色」を打ち出していることも、市場では材料視されており、円安や金利上昇は落ち着きを取り戻している。この日の総裁の発信に為替相場がどのように反応するのかも注視したい。

5.ETF売却加速

ETF売却加速を今回の決定会合で決めたことについて、どのように説明するかも確認したい。

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