東京地方裁判所令和6年10月22日の判決です。
被害者の上着の袖を引っ張って身体を引き寄せようとしたり、肩に手を伸ばして上着の襟首をめくったり、背中付近に手を伸ばして服の上から下着のホックを外そうとしたりした行為に対し会社に使用者責任があるとして30万円、被害後の会社の対応不備について安全配慮義務違反に基づく損害として別途30万円の慰謝料が認容され、合計60万円が認められています。
高松地方裁判所令和元年5月10日の判決は、懇親会の帰りに手や腰に触れたり、職場でスカートの裾を持ち上げたり、避妊具の画像を見せたり、健康診断に関連して卑猥な言葉を述べたりしたという事案で、慰謝料30万円が認められています。
被害に見合った金額とは思えないでしょう。時には慰謝料より弁護士費用のほうが高くついてしまうケースもあります。
もっと被害者の立場に立った判決を下してほしいと思います。
しかし、裁判をする意義はあります。裁判により、加害者はハラスメント加害者として社会的な制裁を受けることもあります。会社も同様です。
裁判も何もしなければ被害者はいわゆる「泣き寝入り」で終わってしまい、加害者は何も反省せず、ハラスメント行為を繰り返すかもしれません。
裁判に訴え、真実を明らかにすることはハラスメント行為のさらなる被害を防止できる可能性があるのです。また、ハラスメントの一つの事例として残ることで、その後のハラスメントの認定に影響を与える可能性もあります。
そして、慰謝料が低いといっても、これを上げていくためには挑戦しないと変わりません。
多くのハラスメントに関する裁判例がありますが、その一つ一つに、それぞれの原告の怒りや悲しみ、願いや思いが詰まっているのです。
※『職場のトラブル即解決!あなたを守る労働法』では、正社員から派遣社員、フリーランス、スキマバイト/日雇いまで働き方別の基礎知識や、「辞めさせられそう」にどう備えるか、各種ハラスメントに遭ったらどうすればいいかといったトピックまで、“泣き寝入りしない対処法”を分かりやすく解説。
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※抜粋2本目:もし職場トラブルで会社を訴えたら…判決まで“平均1年”かかる【労働法のプロが解説】
[筆者]
佐々木 亮(ささき・りょう)
弁護士(東京弁護士会所属)
1975年、埼玉生まれ。東京都立大学法学部法律学科卒業。2003 年弁護士登録。旬報法律事務所所属。日本労働弁護団常任幹事長、ブラック企業被害者対策弁護団代表。民事事件を中心に、労働事件は労働者側のみを取り扱っている。2025年、弁護士ドットコムの「弁護士が選ぶベスト弁護100」労働部門で1位に選ばれる。共著に『いのちが危ない残業代ゼロ制度』(岩波ブックレット)、『会社で起きている事の7割は法律違反』(朝日新書)、著書に『会社に人生を振り回されない武器としての労働法』(KADOKAWA)、『雇止め・無期転換の法律実務』(旬報社)がある。
