Milana Vinn
[ニューヨーク 22日 ロイター] - 米実業家イーロン・マスク氏が今週、スペースXとテスラの3兆5000億ドル規模の合併構想を公に支持したことで、協議に関わる一部の関係者に動揺が広がっている。
協議を直接知る関係者によると、マスク氏の発言によって株主の監視が厳しくなり、手続きが数週間遅れる恐れがあると懸念されているという
この関係者は、今回の情報開示について、テスラ株主の利益が十分に反映されるかどうか疑問を招きかねず、手続きに「混乱」をもたらしたと述べた。一部の協議参加者は、マスク氏の関与を巡って長年の訴訟に発展した2016年のテスラによるソーラーシティ買収との類似点を指摘している。
スペースXとテスラの最高経営責任者(CEO)を兼務し、両社の株式を大量に保有するマスク氏は今週、実現すれば史上最大となる企業取引を両社が検討していると投資家に説明。評価のため、それぞれ特別委員会を設置したことも明らかにした。
事情に詳しい関係者3人によると、両社はアドバイザーを起用したが、協議は初期段階にある。このうち1人によると、スペースXが過去数週間のうちにテスラに打診し、両社はスペースXによるテスラ買収や、新設する持ち株会社の下での合併など、さまざまな取引形態を協議している。対価を全て株式とする案を含め、合併対価の形態も検討しているという。
テスラ、スペースX、マスク氏はコメント要請に回答しなかった。
<ソーラーシティ買収を巡る株主訴訟>
スペースXとテスラの合併のような関連当事者間取引では、一般株主の利益を守るため、通常は独立取締役が手続きを監督する。
この問題が大きな争点となったのが、16年のテスラによるソーラーシティ買収だった。株主は、世界一の富豪であるマスク氏が、経営難に陥っていた屋根置き型太陽光発電会社への自身の投資を救済するため買収手続きに影響を及ぼしたと主張し、訴訟は何年にも及んだ。当時、マスク氏はテスラと、いとこらが創業したソーラーシティの株式をそれぞれ約22%保有していた。
株主側は、マスク氏の関与と公の場での支持表明が、取引の公正さを損なったと主張した。争点の中心となったのは、同氏の持ち株比率は過半数に満たないものの、取締役とのつながりや支配的な経営姿勢から、テスラの支配株主に当たるという主張だった。
デラウェア州最高裁はその後、原告側の主張に言及した。原告側は、独立委員会が存在しなかったことに加え、「取引へのマスク氏の関与と公の場での支持表明に関するその他の特定の事実」を踏まえると、取引手続きが不公正だったと認定すべきだと主張していた。
裁判所は最終的に買収を公正と認めたが、決着までに数年を要し、テスラの取締役らは6000万ドルの支払いで和解した。
<マスク氏は協議に参加できず>
マスク氏はテスラ株の約5分の1、スペースX株の半分弱を保有しており、アナリストらは合併によって同氏が統合会社の支配権を握ることになると指摘している。マスク氏は20日の投資家向け電話会議で、利益相反のある当事者として特別委員会の協議に参加できないことを認めた。協議に詳しい関係者によると、アドバイザーらは同氏を合併協議から外すことを徹底するため、同氏の弁護士とも連絡を取っている。
コロンビア大学のエリック・タリー法学教授は、合併すればマスク氏が2社に時間を振り分ける必要がなくなるため、株主に利益をもたらす可能性があると述べた。一方、テスラは現在、法人登記をデラウェア州ではなくテキサス州に置いているため、訴訟になった場合の見通しはソーラーシティの件よりも予測しにくい可能性があるとした。
最終的には、訴訟リスクは取引条件次第だという。
<マスク氏の発言、協議に影響も>
関係者によると、協議に関わる人々は、マスク氏が合併を公に支持し、協議の存在を明らかにしたことで、投資家の監視が強まる恐れがあると懸念している。独立取締役が取引を評価している間、利害関係者は通常、公の場で意見を述べることを避けるためだ。
この関係者は、アドバイザーらが特別委員会をマスク氏の影響から完全に切り離せなければ、将来のスペースXとテスラの取引を投資家や裁判所が評価する際、ソーラーシティの訴訟が参照される可能性があると述べた。
テスラとスペースXの統合は史上最大の企業取引となり、世界最大級の産業・テクノロジー企業グループが誕生する。マスク氏が2026年に入って実施した、スペースXによる自身の人工知能(AI)企業xAIの買収を上回る規模となる。xAI買収も、これまで発表された企業取引で最大級の一つに数えられる。
これほどの規模の取引は、世界各地の規制当局による審査にも直面する。特に、テスラが中国で事業を展開し、スペースXが米国で防衛やAIに関わる事業を手掛けている点が精査されることになる。