アマゾンのネット通販サイトに「招かれざる客」がやって来るようになった。その客は人間ではない。
SNS大手のメタは9月初め、メールの送信や旅行予約などができるパーソナルAIエージェント「ミューズ」の提供を開始した。決済サービス企業ストライプのAIエージェント向けウォレットを利用すれば、ミューズを使って買い物もできる。無料のベーシック版は、たちまちアメリカの無料アプリランキングで首位に浮上した。
アマゾンは即座にミューズのAIエージェントを禁止した。外部の買い物代行アプリは公然と運用すべきであり、参加するかどうかは通販業者側の判断を尊重すべきだと論じている。
アマゾンとAI買い物客との闘いは、今回が初めてではなかった。2024年11月、AI検索エンジンのパープレキシティは、登録ユーザーがワンクリックでお勧め商品を購入できる「Buy with Pro」の提供を開始した。
この機能についてパープレキシティのドミトリー・シェヴェレンコ最高ビジネス責任者(CBO)は「取引したいユーザーの代理を務めているにすぎない」とモダン・リテールに語り、販売業者としてのアマゾンの役割を「補っている」と主張した。
翌年になると、パープレキシティのAIブラウザ「コメット」をめぐって対立がエスカレートする。アマゾンが技術的な遮断措置を講じると、パープレキシティは24時間以内にその措置を迂回した。続いてアマゾンは停止通告に踏み切ったが、それもうまくいかなかったことから訴えを起こし、コメットが「こっそり」人間の客を装って利用規約に違反していると主張した。
この問題には金銭も絡んでいた。広告主は人間に見てもらうために料金を支払う。しかしAIエージェントが生成するトラフィックのために、広告を見たのが人間なのかAIなのかをアマゾンが判断することが難しくなった。アマゾンの広告事業は2026年第2四半期に198億ドルの売上高を計上している。アマゾンは2026年3月に仮差し止め命令を勝ち取ったものの、8月には連邦控訴裁が、パープレキシティはアマゾンのウェブサイトにアクセスしていないと判断して同命令を取り消した。アマゾンにアクセスしていたのは、AIエージェントの助けを借りた利用客だった。利用客がAIエージェントに指示して商品を買わせた場合、購入したのはその客であって、エージェントではない。