Andrea Shalal Maria Martinez

[バンコク 16日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は16日、人工知能(AI)に適切な安全策や倫理的な枠組みを設けなければ、リスクが恩恵を上回る恐れがあると述べた。業界の自主規制に主要国政府の関与を組み合わせる考えを支持した。

米AI開発企業アンソロピック共同創業者のジャック・クラーク氏も参加したパネル討論で発言した。AIは既に世界経済を押し上げているが、生産性の大幅な向上が期待されたほど早く実現しなければ、経済にマイナスのショックを及ぼす恐れもあると述べた。

「安全策がなければ、リスクが恩恵を上回るかもしれない。何よりも倫理的な基盤が必要だが、社会としてそこまで達しているかどうか、確信が持てない」と語った。

急速に進化するAIの恩恵を世界中の人々が受けるには、デジタルインフラや電力を利用できる環境、適切な規制といった一定の条件を整える必要があるとした。

また、これほど速く進化する技術にどう安全策を設けるかが、今やより大きな課題だと指摘。AIの開発状況を、観客を守る防護柵がない中を猛スピードで走るF1マシンに例えた。

<常識に即した基準>

ゲオルギエワ氏は、絶えず変化するこの分野を規制・監督するのに政府は向いていないため、業界の自主規制が適切だと述べた。ただ社会との対話も必要だとした。米国、中国、インドなどAI産業の規模が大きい国々に加え、AIのサプライチェーン(供給網)に関わる国々も関与すべきだと語った。

IMFのような機関も、生産性の伸び、労働市場、金融安定へのリスクなど、それぞれの専門分野で関与すべきだと述べた。

クラーク氏は基準づくりは可能であり、欧州連合(EU)の初期段階の政策枠組みや米国での自主的な取り組みを通じ、既に始まりつつあると主張した。

同氏はアンソロピックが自社システムを定期的に試験し、試験の詳細を公表して情報を共有していると説明した。ただ、こうした取り組みを完全に自主性に委ねるべきではないとの考えを示した。

AIを開発する国々による規制に賛成するかと問われると、「賛成だ。常識に即した基準が必要だ。それが最終的に技術への信頼を生み、経済を発展させる」と答えた。

また、アンソロピックは第三者の評価者を受け入れ、データを調べる権限を与えていると説明した。「最終的には、他の多くの企業もそうする必要があると考えている」と述べ、イーロン・マスク氏が自身の会社スペースXも同様の取り組みを行う可能性に言及したことを歓迎した。

ブラウン米財務次官(国際担当)は別の記者会見で、IMFは世界経済のリスクに目を向け過ぎており、AIのように経済にプラスのショックをもたらす可能性をもっと重視すべきだと述べた。

イングランド銀行(英中央銀行)のベイリー総裁は国際金融協会(IIF)の会合で、AIの試験基準を巡って各国の足並みがそろうことについて、1カ月前より楽観的になったと述べた。

別のパネル討論で、ドイツ連邦銀行(中銀)のナーゲル総裁が、AIは世界の不均衡を拡大させる可能性があると述べた。「ハードウエアとソフトウエア開発の両面でAIに巨額の投資が必要なことを考えれば、それは明らかだ」と語った。

ハーバード大学の経済学者ダニ・ロドリック氏は、AIによる生産性向上が実現するかどうかは分からず、もろ刃の剣になっていると指摘した。先週、ベルリンで開かれた学際的な会議の後、ロイターに語った。

生産性が向上すれば、影響を受ける業種で大規模な雇用喪失が起き、職を追われる人が出る可能性がある。一方、向上しなければ、データセンターへの巨額投資が多大な損失を伴う金融面の調整を引き起こしかねないと述べた。「雇用危機か金融危機か、どちらに対処することになるのか分からない」と語った。

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