過去の複数の研究データを分析した結果、不眠症とさまざまな神経疾患・精神疾患との間に顕著な関連があることが明らかになった。
欧州各国の研究者らによると、不眠症を抱える人は、認知症や脳卒中、入院、自殺行動のリスクが高い傾向にあった。この研究結果は、学術誌「スリープ・メディシン・レビューズ」に掲載された。
一時的に眠れない状態は「急性不眠症」と呼ばれ、ストレスや病気、痛み、薬、ホルモンの変化など、さまざまな要因で起こる。一方、週3日以上の不眠が3カ月以上続き、日中の生活にも支障をきたす場合は「慢性不眠症」とされる。
米ペンシルベニア大学で精神医学の臨床助教授を務めるアレクサンドリア・ミュンチによると、急性不眠症はストレスなどをきっかけに起こることがあるが、睡眠不足を取り戻そうと必要以上に長くベッドにいたり、眠ろうと無理をしたりする行動が、かえって不眠を長引かせることがある。
また、米ペンシルベニア州立大学のオルフェウ・バクストン教授は、遺伝的な要因に仕事上のストレスや過酷な生活環境などが重なることや、「ベッドや寝室は眠れない場所だ」と無意識に結びつけるようになることも、慢性不眠症につながる可能性があると指摘する。
今回、研究チームは合計130万人以上を対象とした複数の研究を分析した。その結果、不眠症を抱える人は脳卒中のリスクが26%高く、理由を問わず入院するリスクも28%高かった。この他、認知症やうつ病、自殺行動との関連も確認された。
ただし、不眠症と脳卒中の因果関係は、まだ明らかになっていない。ミュンチによると、血圧が関係している可能性があるという。「不眠症の人は高血圧になりやすいが、これはストレスや生活習慣といった共通のリスク要因を抱えているためとも考えられる。高血圧は治療可能な脳卒中のリスク要因だ」
認知症との関連については、睡眠中に脳がアルツハイマー病に関わるタンパク質などの老廃物を排出する働きが関係している可能性があるという。「睡眠の質が落ちると、この浄化プロセスがうまく機能しなくなる可能性がある。ただし、この分野の研究はまだ途上であり、慎重に解釈すべきだ」とミュンチは言う。