ドナルド・トランプが「チャウシェスクの末路」に近づいている、とまで言うのは大げさかもしれない。だが、迷いや慎重さとは無縁のトランプを取り巻く空気が、明らかに変わってきたのは確かだ。
これまでトランプが過激で常軌を逸した発言をしても、それは常に強い立場にいる者の言葉だった。だが、これからの2年間はそうではない。
中間選挙で共和党が敗北する可能性が迫っており、大統領としての求心力も衰えている。完全なレームダックとまではいかなくとも、政権運営に苦しむことになるだろう。共和党も当然、ポスト・トランプの時代を見据え始める。
そんな状況では、これまでのようなトランプの言葉遣いが、かえってトランプを無力に見せるおそれがある。怒りの言葉が激しさを増す一方で、実際に物事を動かす力は弱まっていく。人々がこの2つを結び付けて見るようになるのは避けられない。
9月下旬、トランプは隣国であり同盟国でもあるカナダを「世界で最悪の国の1つ」とこき下ろした。もちろん、こうした突拍子もない言葉選び自体は今に始まったことではない。われわれは何度も似たような発言を聞いてきた。
だが、政権の終わりが少しずつ見えてきた今、それは問題だ。
現カナダ首相のマーク・カーニーがトランプを見る目は、未熟だった最初の彼氏をすっかり過去の人にした女子学生のようだ。トランプは、「カナダはわれわれにつけ込んでいる……そのうちカナダのほうから、『大統領、本当に申し訳ありませんでした』と言いに来ることになる」と宣った。
これを聞いたカーニーが冷ややかな視線を送る様子は、宇宙からでも見えそうだ。トランプがせっせと作っていたラブソングのミックステープも、今ごろはゴミ箱の中だろう。