歴代大統領は品位を重んじていたが
トランプの言葉遣いは昔から過激だった。歴史的に品位を重んじ、崇高な理想を語ることを求められてきたアメリカの大統領という立場を考えれば、その異例さは際立つ。
歴代の大統領は普通、「女のあそこをつかむ」などと話しているのを人に聞かれた後で、大統領に選ばれたりはしなかった。
しかしトランプは、言葉遣いについても、自分でルールを作った。そして、誰にもまねのできない自分流のやり方で勝利をつかんできた。
もちろん、トランプがすでに無力になったわけではない。今も戦争を遂行する力を持っている。歴代のどの大統領とも違うやり方で、今なお舞台の主役であり続けている。力の弱い国の指導者たちは、彼が次に何をするか分からないため、今も困惑し、居心地の悪い思いをさせられている。
ただし、力のある指導者は違う。最近の国賓訪問では、習近平のほうがトランプを居心地悪そうに見せていた。
そして何より、トランプがいずれ大統領の座を去ることは避けられないという事実が、新しい力関係を生み出している。トランプが舞台から消える日が現実のものとして感じられるようになるほど、彼の言葉は聞き流され、無視されやすくなっていく。
今のところ、この変化はまだ象徴的なものにすぎず、実際の権力が失われたわけではない。しかし、トランプの発言が過激になる一方、現実の出来事を思い通りに動かす力が弱まっていけば、盟友も取り巻きも、政敵も、世界を舞台に競い合う他国の指導者も、そしてアメリカの有権者も、誰もが「衰退」という物語を読み取るようになる。
言葉が大げさになればなるほど、権力は逆に下降線をたどっているように見える。どんな指導者にとっても、それは望ましい姿ではない。ましてや、これほど長い間、圧倒的な存在感を示してきた人物ならなおさらだ。
チャウシェスクと同じ轍を踏まないためにも、トランプは当分、バルコニーには近づかないほうがよいのかもしれない。
[筆者]
ジョージ・チェスタートン(George Chesterton)
本誌国際版 出版・購読戦略担当ディレクター
(本稿で示された見解は筆者個人によるものです)
9.11から25年。安価なドローンとAIとSNSの普及で、テロ組織は力を蓄え、脅威を増している