さまざまな業界で働く人たちが実体験を綴った「日記シリーズ」は、これまでにも幾度となくご紹介してきた。『証券マンひりひり日記』(日野山 大 著、三五館シンシャ/フォレスト出版)はその最新刊だが、ほかの作品とは異なる点がひとつある。
このシリーズの著者の多くは基本的に、自らが身を置いてきた組織の名称をぼかしている。しかし、1996年の入社以来25年を証券会社で過ごしてきた著者は、その会社が日興証券であることに加え、支店名や部署名まですべて実名にしているのである。
しかも読み進めていくと、その理由が次第に明らかになっていく。
私が日興証券をやめて、5年がすぎた。1996年に入社してから25年。人生の半分を証券会社ですごしたことになる。そして、そんな証券マン人生の最後は、私が思い描いていたのとはまったく違うものになった。私は社内で目にした“ある不正”について内部通報を繰り返し、最終的に金融庁へ公益通報を行なった。その挙げ句、早期退職を迫られ、会社を去ることになった。(「まえがき――私は被害者だったのか?」より)
端的にいえば、正義感がとても強いのだ。実際、不正を指摘したのは会社を思ってのことであり、「おかしいのは会社であって、私は正しい」と考えていたようだ(過去を振り返っていくうちに、思いは少しずつ変わり始めたそうだが)。
「テキトーな自分とはまったく違うタイプだな」と感じた。しかし、それでも共感してしまうのは、まじめさが伝わってくるからである。
人見知りで押しが弱く、強引な営業ができなかったのだという。そのため「人は商品を買うのではなく“納得”を買うのだ。それは相手を信用できるかどうかで決まる」という信念のもと、自分なりの誠実な営業を積み重ねることで成績を伸ばしていった。
だが、その反面、間違っていることを「見なかったこと」にはできない人でもあった。幼少期から「正しいこと」に対する異様なこだわりがあったのだという。