<下院に加えて上院でも民主党が議席を伸ばし、そこに共和党の造反組が加われば……>

現在アメリカでは中間選挙が戦われています。通常2期目の大統領の中間選挙というのは、任期の終わりにあたって、世論の評価を定めるものになります。また同時に、選挙が終わったら事実上、2年後の大統領選に向けて両党は選挙戦のスタートを切ることになります。

ところが、今回の中間選挙は全く違っています。何のために戦われているのかというと、中間選挙後に大統領の弾劾が行われる可能性が否定できないからです。この問題が争点の中心だともいえ、したがって選挙の結果によって弾劾や罷免など、政局が動く可能性があります。けれども、この問題はそう簡単ではありません。とりあえず、3つのシナリオを想定したいと思います。

1つ目は、弾劾回避というケースです。議会下院はどうやら民主党が過半数を取る可能性が高いようで、下院による弾劾の発議にはなるでしょう。ですが、大統領を本当に弾劾するには上院の3分の2の賛成が必要で、選挙結果と造反ではこれに届かない可能性があります。そうなれば、来年1月以降も普通にトランプ政権が継続していくでしょう。ところが、どうもこのシナリオが成立する可能性はジリジリ下がってきているのが現状です。

2つ目のシナリオは、弾劾成立という場合です。下院の過半数に加えて、上院でも民主党が過半数の53議席前後をうかがっているのが現在の情勢です。これに共和党の非改選者を中心に14人が造反すれば、上院で67の弾劾賛成票に達する可能性はあります。その場合は、即座にバンス副大統領が昇任して大統領になります。

トランプ弾劾が成立すればバンスが大統領に

バンス氏はトランプ政権の副大統領ですから、彼が大統領になっても政策は変わらない、とも思えるのですが、そう単純ではありません。まず、上院の過半数を民主党に握られているということは、民主党が閣僚の承認にあたって同意しないと政権運営が難しくなります。最大の問題はバンス政権の副大統領で、就任には上下両院の同意が必要ですから民主党に近い穏健な人物を選ぶ必要が出てきます。

そして、バンス氏自身も、過度にトランプ一族を恩赦したり、激しい予算カットを続けたりしたら弾劾されてしまいます。つまり、同じ共和党政権ではあってもトランプ弾劾によって生まれるバンス政権というのは、現在のものとは相当に性格の異なる政権になる可能性があります。

3つ目のシナリオは、トランプ氏が年内に電撃辞任する場合です。中間選挙に大敗して、下院の過半数を失い、上院も民主党に取られ、共和党からの造反組を加えると弾劾が視野に入った……そのような情勢になったらトランプ氏が年内に辞任する可能性はあると思います。

もちろん、1974年のニクソン辞任と同じように、合衆国大統領として最低限の名誉を守るために弾劾の前に辞任を選択することはあるでしょう。ですが、今回の場合はもっとリアリズムに基づいた行動になります。年内辞任ということは、年内にバンス政権が成立します。そして、中間選挙を受けた新議会が招集される前の旧議会では共和党が過半数を握っています。

トランプの年内辞任は共和党のとってメリットも
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