AIというと、事務作業の自動化を思い浮かべる人も多い。だが、ニューヨークで開かれた本誌の「AIヘルスサミット」では、医療現場の第一線でAIを活用し、重篤な病気を早期に発見することで、医療従事者が治療に着手するまでの時間を確保する取り組みが紹介された。
タンパ総合病院を運営するフロリダ・ヘルス・サイエンシズ・センターの社長兼CEO、ジョン・コーリスによれば、同病院がAIを導入した際、事務作業の効率化よりも臨床現場での活用を優先したという。
その理由は、医療の質や安全性、患者の治療成果に直接役立つ分野にAIを使うためだった。同病院が早い段階からAIを活用した分野の1つが、敗血症の患者への対応だ。コーリスは敗血症について、「米国で主要な死因の1つであり、おそらく多くの国でもそうだ」と強調した。
「私たちは1000人以上の命を救ってきた」とコーリスは語った。「AIを導入していなければ、亡くなっていたはずの人たちだ」
ただしコーリスは、これはAIだけの成果ではないと強調する。AIがもたらす情報を患者の治療成果につなげるには、医師や看護師、薬剤師、科学者らの力が欠かせないからだ。
コーリスによれば、AIの導入によって、敗血症の兆候をより早く捉えられるようになった。患者が敗血症になってから対応するのではなく、発症する可能性を事前に予測できるようになったという。「まさに状況を一変させるゲームチェンジャーだった」と彼は言う。
現在、同院の大学病院部門における敗血症患者の48時間以内の死亡率は5%を下回っているという。コーリスによれば、米国全体では15~18%程度で、一部の病院では30%に達する。