Timour Azhari
[リヤド 12日 ロイター] - サウジアラビアは、自ら望まない形でイランおよびその地域同盟勢力との対立に引き込まれる一方の状況を受け、敵対勢力を抑止し、攻撃に対してより効果的に対応するため、地域防衛協力の構築を進めている。
ただ紅海での多国籍海上防衛連合の結成や、サウジとパキスタンの防衛協力体制にトルコを加える決定は、これまでのところ攻撃の抑止には十分な効果を上げていない、というのが複数の専門家や外交官の見方だ。
またサウジ自身が、イラン本土やイラクの親イラン組織、イエメンの親イラン武装組織フーシ派に対して実施してきた軍事的対応も今のところ限定されている。フーシ派は先月からサウジ南部で新たな攻勢を開始し、サウジ船舶への攻撃も行っている。
サウジが直面するのは難しいジレンマで、攻撃を抑止して「ビジョン2030」に象徴される野心的な経済改革計画を守りたいが、米国とイランの戦争を発端とする地域全体の大規模紛争には巻き込まれたくない。
ある中東の高官は「サウジの問題は、敵対勢力が同国の『戦争を避けたい』という意向を理解していることにあり、その姿勢につけ込まれている」と解説する。
サウジ政府の広報室は、ロイターの取材要請に回答しなかった。
湾岸国際フォーラムの上級研究員でサウジ人アナリストのアジズ・アルガシアン氏は「これは非常に憂慮すべき状況で、まさにサウジが避けたかった事態だ。イランとその関連勢力は、サウジは反撃しないと考えている。彼らはサウジの自制を、攻撃を受け入れていることと同じだと解釈しているので、サウジにとって抑止力を確立する方法を見つけることが極めて重要になった。ただし、そのバランスを取ることが難しい」と述べた。
実際、サウジとパキスタン、トルコの共同防衛協定締結後も、フーシ派は再びサウジ国内の石油施設を攻撃している。
<段階的なエスカレーション>
米国とイスラエルが2月28日にイランとの戦争を開始して以降、サウジはまず外交を優先し、攻撃を受けても受け流す姿勢を採用。その後限定的な軍事対応も実施したが、それらは公表されなかった。さらに4月に米国とイランの停戦が発効した頃には、サウジもイランと一定の緊張緩和が実現し、湾岸地域における比較的安全な拠点としての地位を取り戻していた。
しかしこの数週間でその状況は大きく揺らいできた。サウジは足元で、イエメンやイラクから重要な石油インフラへの攻撃を受けたほか、ホルムズ海峡および紅海において海上輸送への攻撃にも見舞われている。
2週間前には、サウジと米国が共同で空爆を実施し、サウジ国内への攻撃に関与したとされるイラク民兵組織を標的とした。これは戦争開始以降、サウジが公に認めた初めての報復措置だった。
しかもこの対応は、サウジがこれまで米国やイスラエルとともに戦う当事者と見なされることを避けてきた方針の転換を意味し、その2日後に紅海における海上防衛連合を主導する意向を表明。そして先週、メッカでトルコおよびパキスタンとの共同防衛協定を発表した。
国際危機グループで湾岸・アラビア半島部門を率いるヤスミン・ファルーク氏は「これはサウジがイランに『われわれはさらなる段階へ進む意思がある』というメッセージを送るためのものだ。もちろん、まずは外交手段を尽くすが、必要であれば外交の一線を越える用意もあるという含意だ」と語った。
それでもファルーク氏は、これらの連合構想は依然として「試験的な取り組み」に過ぎず、現時点で共同軍事行動が実現する可能性は低いと付け加えた。
<メッカ防衛協定>
イスラム教の最重要聖地メッカで、金曜礼拝の後に発表されたサウジ・トルコ・パキスタン共同防衛協定には、イスラム諸国が1つの「ウンマ(イスラム共同体)」として互いを守ることを誓うという強い象徴的な意味合いがある、とカーネギー中東プログラムの非常勤研究員のスルタン・アラメル氏は分析した。
ただ実際にどのような役割分担となるのかは、依然として不透明だ。
トルコのフィダン外相は8日、この協定は技術的には北大西洋条約機構(NATO)の第5条と同様の仕組みであり、加盟国のいずれかが攻撃を受けた場合には、要請に応じて各国が協議し、どのような支援を行うか決定すると説明した。
一方、パキスタンは以前からサウジと防衛協定を結んでいるが、これまでイランやその同盟勢力との軍事衝突への関与を避けてきたし、サウジが数百回に及ぶミサイル・ドローン(無人機)攻撃を受ける中でも、その立場を維持してきた。
イランは今回の協定について、米国などの外部勢力への依存から脱却する一歩だとの見方を示した上で「敵と脅威を正しく認識する限り、懸念する理由はない」とコメントしている。
<頭痛の種>
サウジ南部国境に接するイエメンではフーシ派が先月、4年間続いた停戦を終了し、サウジアラビアに対する海上封鎖を宣言したうえで、同国の石油インフラへの攻撃を開始した。
これらの攻撃は、サウジが依然として非対称戦争に弱いことを示している。またフーシ派のミサイル・ドローン攻撃によってサウジの石油生産量が半減した2019年の危機も想起させた。当時の攻撃は、ロイターの過去の報道によればイランが計画した。
イエメンはサウジにとって特に頭の痛い問題と言える。サウジは15年、イランの支援を受けるフーシ派が首都サヌアを制圧したことを受けて軍事介入を主導したが、その結果として多くの死傷者や飢饉が発生し、国際社会から強い批判を受けた。
今回、イエメンが再び戦争の瀬戸際に近づく中で、サウジは軍事攻勢を行う場合でもイエメン政府軍が主導する形を望み、紅海の海上輸送を守るためには多国籍海上防衛連合が必要だと主張している。
会議出席者らによれば、連合立ち上げに向けた最初の会合への招待状は開催のわずか数日前に送られており、サウジアラビアがこの構想をいかに急いで推進しているかがうかがえる。これまでに地域14か国が参加を表明しており、今後さらに増える見通しだ。もっとも西側外交筋の話では、欧州諸国は依然として参加の是非を検討中であり、イエメンでの戦争に深く関与することを懸念している。
サウジはできるだけ早期に連合の正式発足を発表したい考えで、今週中にもジェッダで関連会合が開かれる予定だ。