2つ目は、スペースXの株価が低調であると、同じくAI企業の「ビッグスリー」を形成する、アンソロピックとオープンAIの上場が難航するという見通しです。スペースXの上場申請書やその中の資産報告などは、かなりチンプンカンプンだと言われていますが、それでもロケットや宇宙船のビジネスは製造業のカテゴリとして、会計の状態を見ることはできます。

ですが、アンソロピックとオープンAIの場合は、モノの部分は少ないわけで、データとプログラムといった「無形固定資産」への先行投資で出来上がっている企業です。そうなると、上場審査は手間取るでしょうし、上場を待っている間に市場が低迷すると、上場がうまくいかない可能性があります。その場合は、これまで資金調達に使ってきたノンバンクやベンチャーキャピタルなどの資金が回らなくなって、アメリカ経済全体にも深い影を落とすようになるかもしれません。

そのような事態になると、例えば先行したスペースXが、改めてAI株として残りの2社を買うというシナリオが浮上します。何とかうまく、この2社を上場させて、その上でスペースXが買うという可能性もありますし、上場が行き詰まる中でスペースXによる買収で延命するという可能性もあります。オープンAIの場合は非営利法人が所有権を持っているので、買収されにくい特質がありますが、一旦上場するようですと買われやすくなるという説もあります。

仮にそのような大規模な再編が進む場合には、時価総額を増やすためにテスラとの合併も含める案も出るかもしれません。つまり、肥大化しつつ行き詰まりを見せているAI3社が再編によって事態を打開するという可能性です。マスク氏は、完全自動運転や火星開発などの構想と並んで、AIのイノベーションにも並々ならぬ意欲を持っている人物です。その意欲を実際の成果に結びつけるには、現在スペースXの傘下にあるxAIだけでは足りないだろうという声もあります。

GAFAMが絡んだ大再編の可能性も

3点目は、そうした再編にシリコンバレーの大企業も加わってくるという可能性です。「GAFAM」と呼ばれる巨大テック企業に加えて、AI企業の3社が同じような規模で企業価値を作り上げるのが難しいのであれば、GAFAMを絡めた再編が行われるシナリオも成立するかもしれません。

そうは言っても、先週から今週にかけてのスペースX株の乱高下は、新規上場した巨大企業の株価の推移としては「よくある範囲」だという見方もあります。メタ(旧フェイスブック)の株式上場の際には、株価が本格的に上昇するまでには、もっと大きな低迷期を経てきた歴史もあります。それと比較するのであれば、今回のスペースXの場合は、まだまだ心配する必要はないという声が出るのも当然かもしれません。

ですが、時代の変化するスピード、とりわけテクノロジーが進化するスピードは、昔とは比較にならないほど加速しているのは事実です。そのスピード感を前提にしますと、さまざまなシナリオを想定しながら状況を見ていく必要は、確かにあると考えられるのです。

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