FRBを変え始めたウォーシュ
これまで中央銀行は、将来の政策見通しを事前に示す「フォワードガイダンス」を重視してきた。しかしウォーシュはその比重を下げ、声明文を短くし、記者会見も簡潔化するなど、口数の少なかったグリーンスパン時代を思わせる運営へと舵を切っている。
議長就任後初となる6月17日の記者会見で、声明にフォワードガイダンスを盛り込まなかった理由を、現状に適さないからだと説明した。
これはまさに議長主導の変化だ。FRBの発信の仕方が変われば、市場の見方も変わる。
ウォーシュには、FRBの方向性を定め、優先事項を示し、対外発信を統制して、組織全体を導く力がある。しかし、議長の力を万能視したとき、「議長崇拝」が始まる。
完全雇用、物価安定、そして適度な金利水準の実現というFRBの経済的使命は、トランプが考えるキャスティングよりもはるかに重い。
議長は会議を支配することはできても、金融経済のすべてを支配することはできない。グリーンスパンはそのことをよく理解していた。
ウォーシュの最初の声明は、堅調な成長、中東紛争などに起因する高い不確実性、供給ショック、そしてインフレが2%目標を上回っていることに言及した。
また記者会見では、金融政策の使命を「可能な限り正確に遂行すること」と表現した。
これは「議長万能論を戒める一言」であり、中央銀行家による限界の告白でもある。
そしてそれこそが、グリーンスパンがトランプに残した最後の教訓だ。FRB議長は、権限が一人に集中しないよう設計された制度の中で、最も目立つ存在にすぎない。
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