まるで映画のキャスティング
トランプは、ジョージ・W・ブッシュ政権で経済顧問を務め、FRB理事も務めたウォーシュについて、「まるでキャスティング会社が選んできたような適任だ」と語り、「決して期待を裏切らない」と付け加えた。
パウエルのことは、「愚かだ」「頑固だ」「対応が遅すぎる」と罵倒した。
FRB議長なら、直感や忠誠心、見た目や度胸だけで、委員会や経済モデル、FRBに課された法的な使命、債券市場などが複雑に絡み合う問題を解決できると考える発想だ。
この発想が持つ単純明快な魅力は理解できる。インフレは人々を苦しめるが、金利政策は理解しにくい。借入コストが高止まりすれば、大統領は有権者の不満のはけ口となる存在を求める。FRB議長は、国民にとって分かりやすい「顔」になる。
その点、グリーンスパンほど現代のFRB議長として超人的に見えた人物はいない。
グリーンスパンは、12人の委員で構成される連邦公開市場委員会(FOMC)で合意形成を進める手腕で知られ、1980年代後半~2000年代初頭には、当時としては米国史上最長の景気拡大を支えたと多くの人から評価された。
トランプの誤りは、FRB議長の仕事が「預言者」のようなものだと考えていることだ。グリーンスパンのキャリアは別のことを示している。
FRB議長が成功しているように見えれば見えるほど、制度的な幸運や委員会運営の巧みさ、そして経済の不確実性を、個人の卓越した能力と取り違えやすくなるものだ。
グリーンスパン伝説には確かな実績の裏付けがあった。ロナルド・レーガンが1987年に彼を指名し、その任期は2006年1月まで続いた。
グリーンスパンは2度の景気後退、アジア通貨危機、そして9.11同時多発テロ後の混乱を乗り切った。