発注者が修正をお願いするのには理由がある。会社員には会社員としての行動原理がある。たとえば上司に承認してもらわなければならない、関係者がゴーサインを出すための条件がある、といったことだ。受注者の「完璧主義」や「理想主義」が、発注者の社内事情をまったく無視した形で発動されると、それはコミュニケーションコストの高さに直結する。フリーランスと会社員では行動原理が根本的に違うのだ。

一度「面倒な人認定」されてしまうと、どれだけアウトプットが優れていても、「それ以上のコストがかかる人」として記憶される。余程の看板や実績がない限り、次の発注が来ることはない。そして怖いのは、本人がそのことに気づかないまま時間が過ぎていく点だ。

 面倒な人だとわかっていても発注者が発注する場合もあります。ただし、それは、その人が面倒を凌駕するような価値を持っているときだけです。面倒くさいけど、あの人に頼めば絶対に数字が取れる。あの人には面倒くささを上回るブランド力や知名度がある。こうした場合だけなのです。

ーー「また頼みたい」と言われる人がやっていること

発注者は「忙しい組織人」だという視点を持てるか

コミュニケーションコストが高くなる根本には、「発注者の立場への想像力の欠如」がある、と著者は言う。共に仕事をする相手のことを想像する、とはよく言われることだが、本当の意味での想像ができているだろうか。

たとえば、フリーランスは基本的に一人で動き、自分の時間をコントロールしやすい。しかし発注者である会社員は、上司への報告、チームのマネジメント、様々な会議への参加、デザイナーや印刷所との調整——そうした多数の役割を同時にこなしながら、複数の案件を並行して動かしている。

そんな状況で「思いついたことを都度メールで送ってくる」「金曜夕方や月曜午前中といった誰もが多忙な時間に複雑な相談を持ちかけてくる」「ゲラになってから大量の赤字を入れる」ライターがいれば、どうなるか。それが意図的でなくても、相手の業務に大きな負荷を与えていることになる。

著者はゲラにはほとんど赤字を入れないことを心がけているという。理由は「編集者にもDTP担当者にも、余計な手間をかけたくないから」だ。入稿前の段階で修正が最低限で済むように仕上げておけばいい、という考えだ。自分が満足するためではなく、関わる人全員の負担を減らすことを第一に考える——その姿勢こそが、長く指名され続ける理由の一つだと本書は教えてくれる。

返信の遅い人は嫌われる
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