<「トランプvsトランプ」の裁判でトランプが不戦勝、トランプがファイトマネー1億ドルを獲得し過去の訴追や捜査も免除……これってどういう状況? 実際にあったこの裁判を、アメリカ出身芸人のパックンが解説>

自分を相手に裁判を起こす?! 普通なら困難な技だが大統領ならできる。過去の納税記録が漏洩したとして、少なくとも100億ドルの賠償を求めて提訴した原告のドナルド・トランプ米大統領。被告は米内国歳入庁(IRS)だが、そのIRSを統括する行政機関のトップもトランプだ。ボクシングのタイトルマッチが「井上尚弥vs井上尚弥」のような、不思議な対戦だ。

起訴内容は法的な根拠が希薄で、裁判になったらIRSが勝つと専門家はみていたが、トランプとトランプの間のことだからあっさり和解が成立。ファーストゴングが鳴る前に、尚弥がマットに横たわって、尚弥の「不戦勝」となった展開だ。

和解の内容は、まず政府が18億ドル弱の「反武器化基金」の創設を約束。これは「司法の武器化」によって、政府から不当な捜査を受けたとされる人に対し補償を行うものだ。よって、本来はジェームズ・コミー元FBI長官やNY州のレティシャ・ジェームズ司法長官などなど、荒唐無稽な捜査を受けているトランプの政敵も支払い対象となるはず。だが基金を仕切るのがトランプの手下なので、彼らは眼中にないだろう。逆に、2021年の米連邦議会議事堂の乱入者を含め、トランプの味方や仲間に国民の血税を配る仕組みとみられる。不戦勝でも勝者(=敗者と同一人物)の好きな人にファイトマネーが支払われるわけ。

さらに、IRSはトランプに対する捜査や訴追の権限を恒久的に放棄した。つまり、今年5月までに行われたどんな脱税や不正行為が今後発覚しても、IRSはそれを取り締まれない。しかもトランプ本人だけでなくトランプ一族と関連企業、さらにその関連企業の関連企業と、超広範囲に完全な免罪符を与えたのだ。

進行中の捜査も免除対象とする措置
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