要するに破調と乱調。これが随所にちりばめられている。その帰結として、登場人物への安易な感情移入を西川は拒絶する。共感したくなるとはぐらかされるのだ(だからこそ違和感を持つ人は少なくないと思う)。人はあくどいと同時に切ない。冷酷なのに優しい。相反する要素がきしみながら絡み合って物語を紡ぐ。

子供への演出の秀逸さは、師匠である是枝裕和譲りなのだろうか。最後に軽薄なタイアップ曲を使って余韻をぶち壊す作品は多いが、抑制しながら細部までしっかりと作り込まれた音楽も見事だ。頑固なのに繊細。あらゆる破綻や二律背反を身のうちに抱え込む西川は、とても強い女性なのだろう。......いや、そもそも女性が強いのか。

NW_MCM_02.jpg『永い言い訳』(2016年)

©2016「永い言い訳」製作委員会

監督/西川美和

出演/本木雅弘、竹原ピストル、藤田健心、白鳥玉季

<本誌2020年11月24日号掲載>

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