要するに破調と乱調。これが随所にちりばめられている。その帰結として、登場人物への安易な感情移入を西川は拒絶する。共感したくなるとはぐらかされるのだ(だからこそ違和感を持つ人は少なくないと思う)。人はあくどいと同時に切ない。冷酷なのに優しい。相反する要素がきしみながら絡み合って物語を紡ぐ。
子供への演出の秀逸さは、師匠である是枝裕和譲りなのだろうか。最後に軽薄なタイアップ曲を使って余韻をぶち壊す作品は多いが、抑制しながら細部までしっかりと作り込まれた音楽も見事だ。頑固なのに繊細。あらゆる破綻や二律背反を身のうちに抱え込む西川は、とても強い女性なのだろう。......いや、そもそも女性が強いのか。
『永い言い訳』(2016年)
©2016「永い言い訳」製作委員会
監督/西川美和
出演/出演/本木雅弘、竹原ピストル、藤田健心、白鳥玉季
<本誌2020年11月24日号掲載>
2026年10月20日号(10月14日発売)は「進化する世界の鉄道」特集。
鉄道黄金期を迎えたヨーロッパを旅する――コリン・ジョイス(ジャーナリスト)/豪快かつ特異なアメリカ大陸鉄道史/膨張する中国鉄路の野望/「夢の超特急」リニアの現実/韓国、アフリカ、インド……世界を駆ける鉄道新事情
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
※画像をクリックするとアマゾンに飛びます