コラム

予想で楽しむノーベル賞、日本人受賞者を自分で考える3つのコツ

2021年09月22日(水)16時55分
ノーベル賞授賞式の吉野彰氏

2019年にノーベル化学賞を受賞し、授賞式でスウェーデン国王と握手する吉野彰氏(2019年12月10日、ストックホルム) TT News Agency/Jonas Ekstromer via REUTERS

<候補者を知り、傾向を押さえ、前哨戦となる賞について調べる──10月に発表されるノーベル賞のうち、生理学・医学賞、物理学賞、化学賞の受賞者を予想する方法を、作家で科学ジャーナリストの茜灯里が伝授する>

秋は、権威や話題性のある科学賞の発表シーズンです。

世界最高峰の学術賞「ノーベル賞」も毎年10月に受賞者が決定し、創始者のアルフレッド・ノーベルの命日である12月10日に受賞式が行われます。

今回は、ノーベル賞のうち、科学3賞(生理学・医学賞、物理学賞、化学賞)の日本人受賞者を自分で予想するための3つのコツを伝授します。

今年は予想や受賞のニュースを受け身で待つだけでなく、自分で予想を考え、当日答え合わせをすることで、科学研究の世界をより身近に感じてみませんか。

◇ ◇ ◇

この賞が世界で最も権威がある学術賞とされているのは、初回が1901年という長い歴史、1000万クローナ(約1億2000万円)の高額賞金、過去の受賞者や大学教授らから推薦された300名ほどの候補者が1年をかけて1〜3名に絞られる狭き門であることが理由です。

受賞時に存命であることが資格条件で、日本人(受賞時に外国籍の者を含む)はこれまでに、科学3賞で24名が受賞しています。

予想に役立つ指標1:2020年の予想記事で候補者を知る

2020年は、残念ながら日本人受賞者はいませんでした。ですが、ノーベル賞は、ある年に候補になって受賞できなければ二度とチャンスがなくなるわけではありません。

現代物理学の父とされるアインシュタインも、最初にノーベル賞候補になったのは1910年で、実際に受賞したのは1921年です。ちなみに、落選したノーベル賞候補者は50年間は情報公開されず、知ることはできません。

直近の3年間でも、有力候補としてマスコミに取り上げられた日本人研究者は、各賞で10名以上います。たとえば生理学・医学賞では、前田浩氏(熊本大学名誉教授)、松村保広氏(国立がん研究センター主幹研究員)、森和俊氏(京都大学教授)、満屋裕明氏(国立国際医療研究センター所長)、岸本忠三氏(大阪大学元学長)、平野俊夫氏(量子科学技術研究開発機構理事長)、坂口志文氏(大阪大学特任教授)、竹市雅俊氏(京都大学名誉教授)、審良静男氏(大阪大学特任教授)、遠藤章氏(東京農工大学特別栄誉教授)、柳町隆造氏(ハワイ大学名誉教授)、水島昇氏(東京大学教授)、御子柴克彦氏(東京大学名誉教授)らの名前が頻繁に挙がっています。

まずは、昨年の予想記事をウェブなどで読み比べて、評価の高い研究者と研究成果をチェックしてみましょう。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト/博士(理学)・獣医師。東京生まれ。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第 24 回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)など。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

利上げの可能性、物価上昇継続なら「非常に高い」=日

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story