最新記事
教育

給付型奨学金で進む教育の機会均等 沖縄では大学進学率の伸び率が全国水準を上回る

2025年11月12日(水)10時40分
舞田敏彦(教育社会学者)
大学図書館

2020年度から導入された給付型奨学金は少しずつ根付いている photoAC

<給付型の対象は住民税非課税世帯だが、年収が低い世帯の学生にも3分の1から3分の2が給付される>

教育基本法第4条は、「国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない」と定めている。いわゆる、教育の機会均等の原則だ。

ここでいう「奨学の措置」の代表的なものは奨学金だが、以前は返還義務のある貸与型だけで、学生ローンと変わらないではないか、という批判が寄せられてきた。これを受け、2020年度より給付型の奨学金が導入されている。私立の大学・短大・専修学校の場合、年間の支給額は自宅生で46万円、自宅外生で91万円。対象は住民税非課税世帯だが、年収300万未満の世帯には3分の2、300万以上380万未満の世帯には3分の1の額が支給される。


高等教育修学支援制度による授業料減免と併用すれば、困窮世帯であっても子どもを大学に行かせることは不可能ではない。日本学生支援機構の公表資料によると、大学、短大・高専、専修学校専門課程の学生のうち、給付型奨学金を使っているのは35万628人。貸与型の利用者は一種(無利子)が46万4664人、二種(有利子)が62万2517人。全学生に占める割合を計算し、グラフで視覚化すると<図1>のようになる。

newsweekjp20251112010401.png

現在では、同世代の9割近くが何らかの高等教育機関に進学する。学生の中での奨学金利用者の割合を出すと、給付が10.6%、貸与一種が14.0%、貸与二種が18.7%となる。奨学金という名称ではあるが、まだ貸与型が主流で、全学生の3人に1人が借金をして学んでいるようだ。

筆者が学生だった1990年代の後半では、貸与奨学金の利用者は1割ほどで、その多くは無利子の一種であった。だが時代とともに利用者が増え、とくに有利子の二種を借りる学生が増加した。二種は審査が緩く、最大月12万円まで借りられるのだが、借り過ぎて借金漬けになり、卒業後に生活が破綻してしまうケースもある。多くの若者に高等教育の機会が開かれるようになってはいる。だがそれは、学生に借金を負わせることで進められてきた、という側面もある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:求人詐欺で戦場へ、ロシアの戦争に駆り出さ

ワールド

ロシアがキーウを大規模攻撃=ウクライナ当局

ワールド

ポーランドの2つの空港が一時閉鎖、ロシアのウクライ

ワールド

タイとカンボジアが停戦に合意=カンボジア国防省
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中