最新記事
日本社会

小学校低学年ほど暴力増加「登校した瞬間、友だちに殴りかかる」...大人が知らない校内暴力の今

2025年11月13日(木)09時00分
石井光太(ノンフィクション作家)

加害者の親も、暴力を振るう理由が分からない

「子どもたちのゲームやSNSが原因です。今の子どもたちは放課後に直接遊ぶことが減り、自宅にいながら一緒にオンラインゲームをしたり、SNSでやりとりをしたりします。そこで何かしらのトラブルが起きていがみ合うわけですが、対面で接しているわけではないので通信を切断することしかできません。

そういう子たちは夜から朝にかけてずっと相手へのイライラを募らせる。そして問題を解決しないまま登校してくるので、教室で相手の姿を見た途端に殴りかかるのです。周りからすれば、一体何が起きたのかまったくわかりません」

対面で接していれば、その場で話し合って誤解を解き、仲直りしたりするだろう。しかし、オンラインの中では、それをすることが難しい。それがこうした暴力沙汰を引き起こしているのである。

このような新たな子どもたちの暴力の形は、拙著『傷つけ合う子どもたち』に詳しく述べたので細かくは譲ることにするが、共通していえるのは、近年の子どもたちの生活環境が、これまでとは異なる暴力の形を生み出しているということだ。

メディアが校内暴力の増加を報じたり、学校で暴力沙汰があったと聞いたりすれば、親は「最近の子は訳が分からない」「先生の指導が悪い」などと思うかもしれない。

他方、加害児の親の方は、子どもが暴力をふるう原因を正確に把握していないので、「もう二度とやっちゃだめよ」と表面的な注意をするしかない。

しかし、重要なのは今の子どもたちの間で出現する暴力の背景にあるものをきちんと見定め、子どもが加害者にならない取り組みをすることだ。

スマホやゲームが悪いというつもりはない。今の親に必要なのは、それはそれとしてやらせつつ、それだけでは育たない能力をどのように培っていくべきかを正確に把握することなのである。


『傷つけ合う子どもたち――大人の知らない、加害と被害』
傷つけ合う子どもたち――大人の知らない、加害と被害
 石井光太・著
 CEメディアハウス

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

[筆者]
石井光太(イシイコウタ)
1977年東京都生まれ、作家。 著書に『物乞う仏陀』『神の棄てた裸体』『絶対貧困』『レンタルチャイルド』『遺体』『浮浪児1945-』『「鬼畜」の家』『43回の殺意』『本当の貧困の話をしよう』『こどもホスピスの奇跡』『ルポ 誰が国語力を殺すのか』『ルポ スマホ育児が子どもを壊す』など多数。

ニューズウィーク日本版 世界最高の投手
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月18日号(11月11日発売)は「世界最高の投手」特集。[保存版]日本最高の投手がMLB最高の投手に―― 全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の2025年

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

マクロスコープ:円安巡り高市政権内で温度差も、積極

ビジネス

ハンガリー債投資判断下げ、財政赤字拡大見通しで=J

ビジネス

ブラジルのコーヒー豆輸出、10月は前年比20.4%

ビジネス

リーガルテック投資に新たな波、AIブームで資金調達
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編をディズニーが中止に、5000人超の「怒りの署名活動」に発展
  • 4
    炎天下や寒空の下で何時間も立ちっぱなし......労働…
  • 5
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 6
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 7
    ついに開館した「大エジプト博物館」の展示内容とは…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 10
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 8
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中