最新記事
ロシア

民間人の目の前でロケット砲を連射するロシア軍...ウクライナの反撃を恐れ「市民を『人間の盾』に」と批判殺到

Russians outraged as video shows artillery open fire from busy road

2024年5月17日(金)18時02分
イザベル・バンブルーゲン
ロシア軍の多連装ロケットシステム(MLRS)

Karasev Viktor/Shutterstock

<ロシア軍の兵士が一般車両の通行をせき止めてロケット砲を発射する様子を捉えた動画に、ロシア国内から非難の声が続々>

ロシア軍の兵士が、ウクライナとの国境に近い(ロシア西部)ベルゴロド州から多連装ロケットシステム(MLRS)を発射する様子を捉えた動画が、ソーシャルメディア上で大きな注目を集めている。発射しているのは交通量の多い一般道の路上で、その目の前では一般車両が行列を作って攻撃が終わるのを待っているという非常に危険な状況だ。

■【動画】ロシア軍は市民を「人間の盾にしている」 国内から批判殺到した民間人の目の前でロケット砲を連射する映像

5月15日に公開されたこの動画には、ロシア軍が多連装ロケットシステム「BM21グラート」を使用してウクライナ東部のハルキウ(ハリコフ)に向けて攻撃を行っており、民間人が乗った複数の車が「通行止め」が終わるのを待っている様子が映っている。

ロシアの独立系メディア「IStories」は、動画の位置情報から撮影場所はベルゴロド州シェベキノ近郊の道路で、動画の中のMLRSはロシア軍がこの1週間、猛攻撃を展開しているハルキウ北部に向けて発射されたものだと特定した。ロシア軍はこの1週間、ハルキウに猛攻撃を仕掛けている。

ウクライナとの国境近くに位置するベルゴロド地方には、ロシア軍の基地や訓練場がある。ロシアとウクライナの戦闘が国境を越えてロシア国内にも広がりつつあるなか、同地域はこれまでに複数回の爆発に見舞われている。またロシア軍はここからウクライナへの攻撃を行っている。

本誌はこの動画についてロシア国防省にメールでコメントを求めたが、これまでに返答はない。

「民間人を危険にさらしている」とロシア国内から批判

この動画を受けて、ソーシャルメディア上ではロシア国内からさまざまな反応が寄せられている。一部からはロシア軍が民間人の利用する道路からこれほど近いところでロケットを発射し、民間人の命を危険にさらしていると非難する声が上がった一方で、動画を投稿することでロシア軍の砲兵部隊の位置をばらしたと地元住民を非難する声もあった。

モスクワ地域のニュースを伝えるチャンネル「モスクワ・テレグラフ」はテレグラムのチャンネルで、「ロシア軍が一般の車道で民間人の車の間からグラートMLRSを発射した」と報じ、「兵士たちはベルゴロド地方の道路上に立ち、車の流れをせき止めてハルキウに向けてMLRSを発射した」と述べた。さらに同チャンネルは、「そのように民間人を危険にさらすなど、彼らはどこまで愚かなのか」とつけ加えた。

また4万人超の購読者がいるラジオ局「Govorit NeMoskva」はテレグラムのチャンネルで、ロシアの民間人が人間の盾として利用された可能性を示唆。問題の動画を共有し、「人間の盾:ベルゴロド近郊で民間人の車の渋滞の中からグラートミサイルが発射された」と述べた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

プーチン大統領、トランプ氏にクリスマスメッセージ=

ワールド

ローマ教皇レオ14世、初のクリスマス説教 ガザの惨

ワールド

中国、米が中印関係改善を妨害と非難

ワールド

中国、TikTok売却でバランスの取れた解決策望む
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    【銘柄】「Switch 2」好調の任天堂にまさかの暗雲...…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 6
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 7
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 8
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 9
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 10
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中