最新記事

ドローン

ロシアを脅かし始めたウクライナの越境攻撃

Drone Explodes Less Than 100 Miles From Moscow as Fear of Strikes Grows

2023年2月7日(火)20時07分
ニック・モルドヴィック

ウクライナ軍が過去にも攻撃に使ったとみられる旧ソ連製の偵察用無人機Tu-141 European Defense-YouTube

<ウクライナのドローン攻撃が激化しているとするなら、ロシアの防空体制に問題が生じている可能性がある、と専門家>

ロシア当局によれば、首都モスクワから150キロも離れていない場所で、正体不明のドローンが爆発した。

この事件は、モスクワから南西に150キロ足らず、ウクライナとの国境から約260キロのカルーガで発生した。

カルーガ州のウラディスラフ・シャフシャ知事は2月6日、テレグラム上で、「朝5時、州都カルーガ近郊の森、高さ50メートルの空中で、ドローンが爆発したことを確認した」と投稿した。

シャフシャによれば、現地インフラへの被害はなく、死傷者も出ていないという。ドローンの詳細や、発射地点に関する詳細は不明だ。

カルーガ州にドローンが飛来したのは、今回が初めてではない。

核搭載可能な爆撃機の本拠地

ロシア紙コメルサントは2022年10月、ロシアの防空システムがカルーガ州南部の上空で、正体不明の無人航空機(UAV)を撃墜したと報じている。その1週間足らず前にも、カルーガ州にあるシャイコフカ空軍基地の上空で、正体不明のドローンが爆発している。この基地は、核兵器搭載可能な超音速ミサイル爆撃機ツボレフTu-22M3を運用する航空連隊の本拠地だ。

ロシア国営のタス通信によると、カルーガ州の知事は2022年12月、同州において、法人や個人、市民によるドローン、クワッドコプター、気球、小型航空機の使用禁止を承認した。この規則の一部として、空域の使用に関する届け出が義務づけられている。

ドローンはウクライナから飛んできた可能性もあるということだ。

元米海兵隊員で、外交政策研究所シニアフェローのロブ・リーはツイッターでテレグラムの記事を引用し、今回爆発したドローンはウクライナのUAVで、高性能爆弾OFAB-100-120を搭載したツボレフTu-141ストリーシュだと述べた。Tu-141は元は旧ソ連製の偵察用ドローンだ。

米海軍分析センターのロシア担当アナリストで、新アメリカ安全保障センターの客員上席研究員を兼任するサミュエル・ベンデットは本誌の取材に対し、ウクライナが関与しているかどうかについては、まだ情報を集めているところだと述べた。

ロシア、ウクライナともに、政府はコメントを発表していない。

「それが本当にTu-141だったのか、それとも別のドローンだったのかは、あまり重要ではない。ウクライナが、ロシア領空の奥深くにドローンを飛ばし、安全であるはずの目標を攻撃しようとすることによって、ロシアに大きな圧力をかけようとしている事実のほうが重要だ」とベンデットは述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米テスラ、従業員の解雇費用に3億5000万ドル超計

ワールド

中国の産業スパイ活動に警戒すべき、独情報機関が国内

ワールド

バイデン氏、ウクライナ支援法案に署名 数時間以内に

ビジネス

米耐久財コア受注、3月は0.2%増 第1四半期の設
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 2

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 3

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」の理由...関係者も見落とした「冷徹な市場のルール」

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 6

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    コロナ禍と東京五輪を挟んだ6年ぶりの訪問で、「新し…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中