最新記事

NFT

アートとNFTめぐるダミアン・ハーストの実験 4800人が作品燃やし、NFTでの保有を選ぶ

2022年8月8日(月)16時32分
青葉やまと

現代美術家ダミアン・ハーストがアートとNFTで「通貨」の概念をゆさぶる...... twitter-HENI

<これから燃やされるアートの所有権に、価値はあるのだろうか? 4800人はイエスと答えた>

斬新な作品で知られるイギリス現代美術家のダミアン・ハースト氏が、アートとNFTの価値をめぐる社会実験を主宰した。対象となった1万点のアート作品のオーナーの約半数は、作品が燃やされると知りながら、その所有権の証であるNFTを保持したいと希望したようだ。

今年7月、ハースト氏自身が制作した1万点の作品をめぐる、6年を費やした壮大なプロジェクトが閉幕した。ハースト氏は2016年に1万点もの作品を制作しながら、作品現物を1点も販売しなかった。代わりにネット上で販売したのが、各作品の所有権の証明となるNFTだ。

そのうえでハースト氏は、斬新なしかけを持ち込んだ。販売条件によると、購入者たちは今年7月の期限までに、ある決断をしなければならない。NFTを所有し続けるか、それともNFTを手放すことと引き換えにアート現物を入手するかという選択だ。

期限以降も引き続きNFTを所有することを希望した場合、アート本体は燃やされてしまう。NFTか実物のアートか、どちらかひとつしかこの世に残せないというしくみだ。単純に考えればNFTを選択した場合、これから燃やされることがわかっている作品の所有権を希望するようなものであり、価値はなさそうにも思える。だが、4800人のオーナーたちがNFTを希望した。

おなじものは2つとない、1万点のアート群

アートは紙に油彩で描かれたカラフルなドットが並ぶもので、ドットのパターンはおなじものが2つとないオリジナルのものとなっている。それぞれの作品には固有の番号が振られ、ユニークなタイトルもつけられた。「7778番:もっていたものをめぐり、彼らは戦った」「4359番:今日この場所で」「299番:希望の涙」といった具合だ。

このプロジェクトは、通貨を意味する「ザ・カレンシー」の名で呼ばれている。ハースト氏によると、アートの通貨としての価値を問う試みだという。

各作品に対応するNFTを購入したオーナーたちは、イギリス現地時間の7月27日午後3時までに、NFTを継続して所有しアートが燃やされるのを見守るか、NFTを放棄してアートの現物を受け取るかを選ばなければならない。

作品に対応するNFTは、デジタル上の所有者である証であり、いわばアート本体あってこそNFTの価値があるともいえる。したがって、作品が燃やされることを知りながらそのNFTを所有するという選択はナンセンスともいえるだろう。

しかし、蓋を開けてみれば、半数近いオーナーが現物を燃やしてでもNFTを希望する結果となった。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:戦闘で労働力不足悪化のロシア、インドに照

ワールド

アングル:フロリダよりパリのディズニーへ、カナダ人

ビジネス

NY外為市場=ドル横ばい、米CPI受け 円は週間で

ビジネス

米国株式市場=3指数が週間で下落、AI巡る懸念継続
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 4
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 5
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベル…
  • 6
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    「ドルも弱い」なのになぜ、円安が進む? 「ドル以外…
  • 9
    毛沢東への回帰? それとも進化? 終身支配へ突き…
  • 10
    「賢明な権威主義」は自由主義に勝る? 自由がない…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 3
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中