最新記事

台湾

台湾はなぜ「政治的リスク」を冒してでも、福島の食品を「解禁」したのか?

Getting Closer to Japan

2022年2月22日(火)19時00分
ブライアン・ヒュー(ジャーナリスト)

福島と周辺4県産食品を使用した商品に原産地表示が義務付けられるかどうかは、まだ明らかにされていない(アメリカ産豚肉を使った商品には原産地表示義務がある)。台北市の柯文哲(コー・ウェンチョー)市長(民進党系)は、市内の一部では福島と周辺4県産食品の使用禁止を維持する可能性を示唆しており、他の都市の民進党系市長も追随する可能性がある。

蔡政権が日本の食品の輸入規制緩和案を発表すると、国民党は輸入規制を支持した2018年の住民投票の結果を無視する決定であり、台湾の民主主義を踏みにじる措置だと非難の声を上げてきた。

だが、その主張に新鮮味はない。かねてから国民党は、台湾全土に戒厳令が敷かれていた時代に、政治活動が厳しく弾圧された「白色テロ」を引き合いに出して、蔡はそれよりもひどい「緑色テロ」に手を染めていると騒いできたのだ(緑は民進党のシンボルカラーだ)。

さらに国民党は、蔡政権によるアメリカ産豚肉の輸入解禁も「独裁的だ」と非難してきたが、12月の住民投票で、かえってその措置が民意に沿っていることを証明することになった。蔡は日本の食品輸入についても、同じような展開を期待しているのかもしれない。

とはいえ、アメリカ産豚肉の輸入解禁と日本の食品輸入規制緩和、そして蔡が1月に功罪相半ばする亡き独裁者・蒋経国(チアン・チンクオ)を記念する文化施設の開館記念式典でスピーチをしたことは、民進党内部で亀裂を生む恐れがある。

もちろん今回の輸入規制緩和案は、蔡が党内をまとめ上げ、強固な地位を築いてきた証拠だ。だが、そんな蔡に対して、あまりにも保守的だという批判が党内から上がってきたとしても、そんなに不思議ではない。

©2022 The Diplomat

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

北朝鮮の衛星打ち上げ、失敗の可能性含め詳細は日米韓

ワールド

北朝鮮が弾道ミサイル技術で衛星打ち上げ、黄海上空で

ワールド

北朝鮮のミサイル、発射失敗か 日本政府は避難の呼び

ワールド

北朝鮮、日中韓首脳宣言に反発 非核化議論「主権侵害
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 2

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 5

    カミラ王妃が「メーガン妃の結婚」について語ったこ…

  • 6

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 7

    台湾を威嚇する中国になぜかべったり、国民党は共産…

  • 8

    トランプ&米共和党、「捕まえて殺す」流儀への謎の執…

  • 9

    胸も脚も、こんなに出して大丈夫? サウジアラビアの…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 5

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 6

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像を…

  • 7

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 8

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 9

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 10

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中