最新記事

核戦争

冷戦期以来、アメリカでも売れ始めた核シェルター

2017年9月20日(水)18時00分
マックス・カンター

大きなパイプを使った比較的簡単な核シェルター Atlas Survival Shelters

<北朝鮮の弾道ミサイルの射程が伸びるのに伴って、アメリカでも核シェルター市場が活気づいている>

挑発的な核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に対し、アメリカのドナルド・トランプ大統領は、軍事行動を取る用意があると脅している。緊迫した情勢の中、アメリカで核シェルター建造を手がける企業に対して問い合わせの電話や注文が急増している。

トランプは9月19日、国連総会で行った演説で、必要に迫らた場合には「北朝鮮を完全に破壊する以外の選択肢はなくなる」と、同国に強く警告した。そして北朝鮮の指導者、金正恩朝鮮労働党委員長を「ロケットマン」と呼んだ。トランプは8月にも、北朝鮮が今後もアメリカを脅し続けるなら、「炎と怒り」に直面するだろうと警告した。

さらに9月15日には、北朝鮮がグアムが射程に入る弾道ミサイル実験を成功させたことなどから、アメリカでも核戦争に対する警戒が強まっている。

そもそも核シェルターの構想は、冷戦初期にアメリカ政府が発した命令まで遡る。現在、アメリカの国土安全保障省(DHS)のウェブサイトでは、核爆発によって生じる放射線や放射性降下物から身を守る手段の1つとして「遮蔽施設(シェルター)」を挙げ、「核爆発の際にはシェルターに身を隠すことが絶対に必要」と記している。

ソ連の核を恐れた時代に戻った

DHSはさらに、2種類のシェルターについて詳述している。1つは爆風を避けるタイプで、核爆発直後の放射線や熱、炎から人を守る。もう1つは降下物を避けるタイプで、核爆発に伴う降下物に含まれた放射線を吸収するために、厚い壁と屋根を備えている。DHSの指針には、「厚い壁、コンクリート、レンガ、土など、降下物から人を遮る物質が重くて密度が高いほど、遮蔽効果は高い」とある。条件を満たしていれば、既存の建物や避難所などでも構わない。

【参考記事】北朝鮮ミサイル攻撃を警戒、日本で核シェルターの需要が急増
【参考記事】核攻撃を生き残る方法(実際にはほとんど不可能)

カリフォルニアに本社を置く企業、アトラス・サバイバル・シェルターのロン・ハバード社長は、マイアミ・ヘラルド紙の8月の取材に対し、2017年内に1000基の核シェルターを販売する見込みだと語り、ダラスに約3万7000平方メートルの工場を建設する計画を明かした。「1960年代に戻った感じだ」と、ハバードは言う。

同社はまた、過去30日間で売った核シェルターは30基以上に及び、6年前の年間販売数を上回る実績だとケーブルテレビのFOXチャンネルに語った。同社が手がける核シェルターには、大きなパイプを使用した簡易型から、硬化コンクリート製の本格的な避難壕までさまざまなタイプがある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

神田財務官、介入有無コメントせず 過度な変動「看過

ワールド

タイ内閣改造、財務相に前証取会長 外相は辞任

ワールド

中国主席、仏・セルビア・ハンガリー訪問へ 5年ぶり

ビジネス

米エリオット、住友商事に数百億円規模の出資=BBG
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 7

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中