最新記事

朝鮮半島

有事想定の米韓軍事演習、北朝鮮「暗殺陰謀」と反発

2017年8月22日(火)11時16分

「敵がわれわれの指導者を暗殺するための陰謀を企てていることが我慢ならない」と、北朝鮮の国営朝鮮中央通信(KCNA)は7月に批判した。「われわれの中核に害をなそうとするものは、地上の果てまで追いかける」

<特殊部隊作戦>

北朝鮮による核兵器開発や、米国本土を射程に収めるミサイル開発の急速な進展により、朝鮮半島における緊張が高まっている。

トランプ米大統領は、米国を脅かせば北朝鮮は「炎と怒り」に直面すると警告した。北朝鮮はこれに対し、米領グアム方面にミサイル発射を行うと脅した。

北朝鮮はその後、米国の次の対応を見極めるとして、グアムへのミサイル発射計画を保留すると明らかにした。

「乙支(ウルチ)フリーダムガーディアン」と呼ばれる米韓合同演習は、1968年に北朝鮮の特殊部隊124部隊が韓国に侵入し、青瓦台(大統領府)を襲撃して朴正煕大統領を狙うことを企てた暗殺未遂事件に起源がある。

米国は1950─53年の朝鮮戦争後、定期的に指揮統制訓練を行ってはいたが、韓国と合同での軍事演習は、この暗殺未遂事件を機に開始された。この事件で韓国に侵入した北朝鮮特殊部隊員は、2人を残して全員が殺害された。

米国は、韓国に約2万8000人の部隊を駐留させている。今回は、その多くが韓国軍との演習に参加する。また今年は、韓国と同盟関係にあるオーストラリアや英国、カナダ、コロンビア、デンマーク、オランダ、ニュージーランドの各国の部隊も参加するという。

「目的は、何か大きな事態が起きて韓国防衛の必要が生じた場合に備えることだ」と、米軍のミシェル・トーマス広報官は言う。

朝鮮戦争が、平和条約ではなく休戦協定で終わったため、韓国と北朝鮮は正式にはいまだ戦争状態にある。

北朝鮮の主要同盟国であり貿易相手国でもある中国やロシアは、米韓両国に合同演習の中止を呼びかけてきた。だが米国は、妥協する構えを見せていない。

「われわれの指導部に対する私の進言は、演習を抑制すべきでないということだ」と、米軍制服組トップのダンフォード統合参謀本部議長は17日、訪問先の北京で述べた。「合同演習は、同盟の防衛力を維持するために非常に重要だ」

(Christine Kim記者、Heekyong Yang記者、翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)



[ソウル 19日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ミャンマー内戦、国軍と少数民族武装勢力が

ビジネス

「クオンツの帝王」ジェームズ・シモンズ氏が死去、8

ワールド

イスラエル、米製兵器「国際法に反する状況で使用」=

ワールド

米中高官、中国の過剰生産巡り協議 太陽光パネルや石
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加支援で供与の可能性

  • 4

    過去30年、乗客の荷物を1つも紛失したことがない奇跡…

  • 5

    「少なくとも10年の禁固刑は覚悟すべき」「大谷はカ…

  • 6

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 9

    礼拝中の牧師を真正面から「銃撃」した男を逮捕...そ…

  • 10

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中