最新記事

朝鮮半島

有事想定の米韓軍事演習、北朝鮮「暗殺陰謀」と反発

2017年8月22日(火)11時16分

 8月19日、空調の効いた韓国の地下バンカーや軍事基地で、戦車ではなくパソコンのキーボードを使って行われる米韓合同軍事演習について、北朝鮮は戦争の予行演習だと非難している。写真は2010年11月、米韓合同演習に参加した米空母ジョージ・ワシントンの艦内(2017年 ロイター)

空調の効いた韓国の地下バンカーや軍事基地で、戦車ではなくパソコンのキーボードを使って行われる米韓合同軍事演習について、北朝鮮は戦争の予行演習だと非難している。

8月21日から31日に実施される米韓両軍の演習では、核能力を備えた北朝鮮との戦争という思いもよらない事態に備えるためのコンピューター・シミュレーションが実施される。

演習の詳細は厳重な機密事項だが、国際的孤立を深める北朝鮮との軍事衝突を想定している。米国側は、その内容を「防衛的な性質」と説明するが、北朝鮮国営メディアは「表面的な誤魔化しだ」と反発している。

「演習には、戦闘に含まれる全ての段階が盛り込まれている。もちろん、勝利するための内容だ」と、2000年代半ばまで定期的に合同演習に参加し、退役した韓国軍のMoon Seong-mook元准将は語る。

厳重に守られた北朝鮮との軍事境界線の南にある埃っぽい演習場から遠く離れた場所で、迷彩服姿でイヤホンを身に着けた米韓両軍の軍人が、ラップトップやスクリーンの前にかがみこんで演習を行う。そんな光景が、在韓米軍のサイトに掲載された過去の合同演習の写真に写されている。

演習で使われるソフトフェアについて、米軍は「芸術的な出来栄えのコンピューター・シミュレーション演習」だと説明する。在韓米軍によると、今回の演習では、演習場などでの実地訓練は行われないという。

演習の一環として、朝鮮半島上空の軍事衛星から送られてきた映像を使い、北朝鮮の深部を詳細に分析することもある、と韓国政府の元関係者は話す。

積み上げられたモニター画面やコンピューター・グラフィックスがシミュレートした戦場の様子を映し出し、部隊の動きも投影されると、韓国軍事専門家で、韓国国防分析研究所に以前所属していたPark Yong-han氏は言う。

「ある地区を拡大して、どの様な部隊がどんな状態で配置され、どこに向かっているか確認することもきる。北朝鮮の場合、全てをリアルタイムで把握することはできないが、(米韓)軍は演習中に、指導部も含めた北朝鮮部隊の所在地を推定している」と、Park氏は話す。

北朝鮮指導部に焦点を合わせた訓練内容が、とりわけ北朝鮮政府を怒らせていると、専門家は指摘する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

習首席が米へのレアアース輸出に合意、トランプ大統領

ビジネス

アングル:中国製電子たばこに関税直撃、米国への輸入

ワールド

日米関税協議、「一致点見いだせていない」と赤沢氏 

ワールド

米中、9日にロンドンで通商協議 トランプ氏が発表
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:韓国新大統領
特集:韓国新大統領
2025年6月10日号(6/ 3発売)

出直し大統領選を制する李在明。「政策なきポピュリスト」の多難な前途

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが、今どきの高齢女性の姿
  • 2
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット騒然の「食パン座り」
  • 3
    脳内スイッチを入れる「ドーパミン習慣」とは?...「朝の1杯」と「心地よい運動」の使い方
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪…
  • 6
    壁に「巨大な穴」が...ペットカメラが記録した「犯行…
  • 7
    プールサイドで食事中の女性の背後...忍び寄る「恐ろ…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全…
  • 10
    ガザに向かうグレタ・トゥーンベリの支援船から救難…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 4
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 5
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪…
  • 8
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 9
    ウクライナが「真珠湾攻撃」決行!ロシア国内に運び…
  • 10
    「ホットヨガ」は本当に健康的なのか?...医師らが語…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 7
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 8
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 9
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 10
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中