最新記事

中印関係

「インドと戦う用意ある」中国が中印国境で実弾演習

2017年7月19日(水)18時10分
トム・オコーナー

1962年の中印国境紛争の舞台になったアルナーチャル・プラデーシュ州を行進するインド陸軍兵士(2012年) Frank Jack Daniel-REUTERS

<中印の覇権争いが激しくなるのと同時に国境をめぐる緊張は増す一方。両国軍が実際に戦火を交えた1962年の紛争以降では最も深刻な状態に>

中国共産党はこのほど、国境を接する大国インドに厳しい警告を発した。両国は、かねてから国境紛争をかかえており、最近も中国は国境付近で実弾演習を実施した。一部ではこの演習によりインド軍にかなりの数の死傷者が出たとの報道が流れたが、両国政府が共に否定した。

この6月にはインド軍が、両国が帰属を争うシッキム州の国境を越える事態が発生した。これを受けて中国共産党の機関紙、環球時報は7月18日付けで、両国に自制を求める内容の論説記事を掲載した。同紙は同時に、領土問題の焦点となっている地域をめぐり、中国はインドと戦う準備はできているという警告も発している。

シッキムは、中国のチベット自治区の南に位置するインドの一州。かつては清の属国で、イギリス統治を経てインドの支配下に入った経緯から、今も小競り合いが絶えない。

【参考記事】ダライ・ラマの中印国境訪問で両国間に火花

環球時報は今回の国境紛争を、アジアを代表する2つの大国が、経済および政治の覇権を巡って繰り広げている、より大きな競争の中にあると位置づける。さらに、この紛争が全面戦争になる事態に備えて、中国政府は部隊や軍備を中印国境に重点配置する用意があるとも述べている。

「中国は、インドの実効支配下にある地域をインド領とは認めていない。両国の間では国境に関する協議が今でも行われているが、この交渉を取り巻く空気はインドによって険悪なものになった」と、環球時報は主張した。

「中国はインドとの武力衝突を望んではおらず、むしろこれを避けるべく全力で努力している。しかし中国は同時に、主権を守るための戦いを恐れてはおらず、長期にわたる対立を念頭に置いた備えを実施するだろう」

2000人の犠牲者が出る衝突も

最近の中国とインドの国境をめぐる緊張は、両軍が実際に戦火を交えた1962年の紛争以降では最も深刻な状態にあると見られている。ヒマラヤ山脈東部の中印国境地帯で起きた同年の紛争では、主にインド軍の兵士を中心に約2000人の犠牲者を出し、中国がわずかながら領土を増やした。

【参考記事】中印対立地帯に日本企業が進出

それから半世紀以上の年月を経た2017年6月16日、緊張が再び高まっている。今回は、中国の西端部にあたるチベットと、インドの東に位置するシッキム州を隔てる、両国が合意した境界線をインド軍が越えたとして、中国が非難したことがきっかけだった。

中国は長い間インドによるシッキム州併合を認めておらず、インドの主権を承認したのは2003年になってからのこと。インド政府は、中国が国境付近でインフラの拡充を進め、インドと隣国ブータンの安全を脅かしているとして、中国政府を非難している。

どちらも矛を収める意志はなく、最近になって中国が軍事的な動きを活発化させたことから、状況は今すぐにでもエスカレートする危険性をはらんでいる。

中国軍がチベットで実施している一連の軍事演習では、戦車を用いた訓練や迫撃砲による砲撃、ミサイルの発射といった演習が、インド軍の部隊が駐留する地域からそれほど遠くない場所で行われている。

【参考記事】地震に乗じてネパールに恩を売る中国

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

台湾TSMC、第4四半期売上高は前年比20%増 予

ビジネス

マスク氏のxAI、ミシシッピ州データセンターに20

ビジネス

アングル:トランプ関税巡る最高裁判決で市場動揺か、

ワールド

韓国、7月から為替取引24時間化 MSCI「先進国
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 5
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 6
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 7
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 8
    トランプがベネズエラで大幅に書き換えた「モンロー…
  • 9
    マドゥロ拘束作戦で暗躍した偵察機「RQ-170」...米空…
  • 10
    「不法移民からアメリカを守る」ICEが市民を射殺、証…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 5
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 6
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 7
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 8
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 9
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 10
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中