最新記事

北朝鮮

北朝鮮のICBM、アメリカの対北抑止施策揺るがす=川上・拓大教授

2017年7月10日(月)09時17分

7月7日、拓殖大学海外事情研究所の川上高司所長は、北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射したことを受けて米国は北朝鮮と関連の深い企業の資金の差し押さえなど圧力強化に動いているものの、軍事力の行使は困難になったと指摘する。写真は北朝鮮が発射したとされるICBM。朝鮮中央通信(KCNA)提供(2017年 ロイターKCNA/via REUTERS)

北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射し、朝鮮半島問題の行方が不透明さを増してきた。米国は北朝鮮と関連の深い企業の資金の差し押さえなど圧力強化に動くものの、拓殖大学海外事情研究所の川上高司所長は、軍事力の行使は困難になったと指摘する。

「米国の拡大抑止は破れつつある」、「米国は北朝鮮を核保有国と認めざるをえない」と指摘する川上教授に話を聞いた。

――米国は国連安保理の緊急会合で、軍事力行使の可能性に言及した。

「米国が北朝鮮に武力行使をすれば、北朝鮮から米国本土にミサイルが飛んでくる可能性が出てきた。米国まで届く核ミサイルが、まだ開発段階であれば攻撃可能だが、今や保有しているのか、保有していないのか分からない段階に入った。6回目の核実験があれば緊張は一気に高まろうが、軍事力の行使は難しいだろう」

――米国が武力行使できないとなると、日本など同盟国への拡大抑止が揺らぎかねない。

「北朝鮮が米国本土の一部に届くミサイルを持ったことで、米国に対する北の最小限抑止が効き始めた。あと何百キロか伸びれば、シアトルやロサンゼルスに届く。もう時間の問題だ。日本が北朝鮮に攻撃されても、主要都市へ報復される可能性が少しでもあれば、米国は反撃をためらうだろう。米国の拡大抑止は破れつつある」

――米国が取りうる手は。

「まず中国に制裁を科しながら、北朝鮮と交渉をやらせる。その結果、中国と取引をしながら北朝鮮の核保有を認めることになるだろう。その後、北朝鮮との間で対話に向かうのではないか。日本にとっては隣国に核保有国がもう一つ誕生する最悪のシナリオだ」

――日本の安全保障環境が一変する。

「日本は力のバランスを保つため、米国に何かしら拡大抑止の手段を要求をするしかない。旧ソ連の核ミサイルに対し、NATO(北大西洋条約機構)のイタリアやベルギーがやったように、米国の核を共有(ニュークリア・シェアリング)するのは選択肢の1つ。非核三原則の1つを取り払い、米国に核持ち込みを要求するという選択肢もある」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、サウジ皇太子と会談 F35売却承認 防

ワールド

エプスタイン文書公開法案、米上下院で可決 トランプ

ワールド

米、国境警備隊をルイジアナ・ミシシッピ州に来月派遣

ワールド

米地裁、テキサス州の選挙区割りを一時差し止め 共和
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中