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日本経済

金利低下でも伸び悩む日本不動産株、「静かなバブル」崩壊中

2017年4月27日(木)18時34分

東京五輪終了後は、オフィスの供給過剰で物件が余り、不動産価格の暴落リスクが高まるとされる「2020年問題」も待ち受ける。

ドイツ証券の大谷氏は「静かなるバブルの崩壊が、着実に伸展している」と話す。

日銀の方向転換を警戒

もう1つのネガティブ要因は、将来の金利上昇懸念だ。

2017年3月の東京証券取引所におけるJ-REITの売買シェアをみると、55.9%を海外投資家が占めている。

だが、J-REITの投資部門別売買状況によれば、海外投資家の3月の売り越し額は102億円で、3カ月連続の売り越しとなった。

海外投資家のJ-REITへの投資意欲が高まらない背景として「日銀による金融緩和余地が少なくなったとの見方が影響している」(アイビー総研代表の関大介氏)という。

東証REIT指数の27日終値は1745.51ポイント。仮に日銀が長期金利の誘導目標を現在のゼロ%から引き上げるとの見方が強まった場合、「1500ポイントを割り込む可能性も充分にある」(関氏)という。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券・投資情報部長の藤戸則弘氏は「金利は短期的に低下傾向にあっても、中長期では上昇していくという市場参加者の見方に変化はない。日銀のイールドカーブコントロールは、延々と続かない」と話す。

不動産会社の業績は悪くない。三井不動産<8801.T>の2017年3月期連結業績は過去最高益を見込んでいるが、足元の株価は弱含みだ。

三菱地所<8802.T>も順調な業績の割には株価がさえない。住友不動産<8830.T>、東急不動産ホールディングス<3289.T>、野村不動産ホールディングス<3231.T>のPER(株価収益率)はいずれも15倍を下回っており、割安感が漂っている。

低金利、好業績見通し、割安感。買い材料は多い。しかし、REITや不動産株を薦める市場関係者は少ない。

REIT市場に詳しいニッセイ基礎研究所・金融研究部主任研究員の岩佐浩人氏は「アベノミクスのスタートが2012年だとすると、4─5年の長期の上昇サイクルが続いていた。不動産市況の悪化を見越して、利益確定している人は多い」と話している。

(辻茉莉花 編集:伊賀大記)

[ロイター]


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