最新記事

米中関係

米中首脳会談ブリーフィング、米中の思惑

2017年4月3日(月)16時00分
遠藤 誉(東京福祉大学国際交流センター長)

アメリカ側の発表

一方、ロイター通信は3月28日、トランプ政権側の話として「トランプ大統領が中国の習近平国家主席を4月6、7日の2日間、フロリダ州にある大統領の別荘"マール・ア・ラーゴ"に招き、首脳会談を行う」と報じた。会談では、北朝鮮による核・ミサイル開発への対応や、通商・為替など経済問題が焦点になる見通しだと報じている。

また、日本の共同通信が3月31日に報道したところによれば、ヘイリー米国連大使(トランプ政権の閣僚級高官)が30日、ニューヨークで共同通信などの取材に応じ、「北朝鮮の核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発を『トランプ政権は許さない』と強調し、トランプ大統領が4月に行われる中国の習近平国家主席との会談で、『北朝鮮に対する圧力強化を要請する』」と明らかにしたという。

米中の思惑の違い

このように、米中首脳会談に対する両国の期待には、歴然とした違いがある。かたや中国が「協力こそが唯一の選択だ」として「ウィン-ウィン」の精神を強調しているのに対し、アメリカは中国に北朝鮮問題や通商為替問題などに関して難題を突き付けようとしている。

たとえ「一つの中国」原則を尊重すると明言したとはいえ、トランプ大統領はあくまでも中国に対して「北朝鮮を説得する責任は中国にある」という姿勢は崩さない構えだ。

米中首脳会談のブリーフィングでは、一文字たりとも「北朝鮮問題」を出さなかった中国は、実はCCTVなどでは、アメリカがTHAADミサイル(終末高高度防衛ミサイル)を韓国に配備し始めたことと米韓合同軍事演習の強化などによって、朝鮮半島の安定が乱されたと、頻繁にアメリカを強く批判している。

ティラーソン国務長官の訪中は、米中首脳会談の下準備をすることが主たる目的であった。日本訪問では「北朝鮮に対するアメリカのこれまでの20年間の政策は間違っていた」と宣言し、韓国訪問ではいきなり米軍基地視察に行ったティラーソン国務長官だったが、いざ北京入りすると北朝鮮問題に対する批判は影をひそめた。ひたすら「衝突せず、対抗せず、相互を尊重し、ともにウィン-ウィンの精神で対中関係を発展させたい」を繰り返した。

中国ではこれを「外交勝利」と位置付け、この言葉を以て「新型大国関係」が「習近平・トランプ」政権下で、ようやく実現すると胸を張っている。

というのは、オバマ政権下では、中国がいかに米中両国を「新型大国関係」と位置づけても、オバマ元大統領からは、それを認めたという反応の言葉が戻ってこなかったからだ。ところが、ティラーソン国務長官は、トランプ大統領の伝言という形で、アメリカ側自らが「不衝突、不対抗......」という名文句を繰り返した。この「不衝突、不対抗......」という言葉が表している内容こそは、まさにオバマ政権時代に習近平国家主席がオバマ大統領に対して言い続けた「新型大国関係」構想そのものである。

中国としてはトランプ大統領が就任前に「一つの中国」原則に懐疑論を唱えながら、それを撤回したという時点で、すでにこれは中国の「外交勝利」と見ていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

東京ガス、25年3月期は減益予想 純利益は半減に 

ワールド

「全インドネシア人のため闘う」、プラボウォ次期大統

ビジネス

中国市場、顧客需要などに対応できなければ地位維持は

ビジネス

IMF借款、上乗せ金利が中低所得国に重圧 債務危機
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中