最新記事

米航空会社

ユナイテッド航空「炎上」、その後わかった5つのこと

2017年4月12日(水)19時20分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部 

ユナイテッド航空を擁護する声も出ている

今回の乗客引きずり出し騒動では、ユナイテッド航空に多くの批判が寄せられた。非難するツイートを出したセレブもいたし、ボイコットの呼び掛けも行われているが、必ずしもアンチ・ユナイテッドの声ばかりではない。

FOXニュースには「ユナイテッド航空は無実だ」と題するコラムが。責任は、ユナイテッド航空の職員ではなく、乗客を暴力的に引きずり出したシカゴの警察官にあると主張している(現在、停職処分を受けている)。

ソーシャルメディア上では、降機を拒否し、警察官に抵抗して怪我をした乗客デイビッド・ダオに対して「当然だ」といった声も散見された。ケンタッキー州ルイビルの地元紙クーリエ・ジャーナルは州民であるダオに関する記事を掲載しているが、この件と関係ないにもかかわらず、ドラッグ関連での逮捕歴があることを伝えている。

海外の航空会社が自社のPRに活用している

注目はアメリカ国内からだけではない。ここぞとばかりにユナイテッド航空を揶揄するツイートを出したのは、なんと海外の航空会社である。

「わが社の機内では引きずり出しが禁止されていることをお伝えします。乗客によるものも、乗務員によるものも」――ロイヤル・ヨルダン航空

エミレーツ航空は動画で。ユナイテッド航空のオスカー・ムニョスCEO(最高経営責任者)が3月に中東湾岸諸国の航空会社は「航空会社ではない」と語ったことを持ち出して、「ムニョスさん、トリップアドバイザーによれば、われわれは本物の航空会社であるだけでなく、最高の航空会社なのですが」と最高のひと言。

これらの航空会社がライバル社の苦境をPRに最大限活用しているのは、トランプ米政権が3月、中東と北アフリカの空港を出発する便で電子機器の機内持ち込み禁止を打ち出したことと、おそらく無関係ではないだろう。

【参考記事】ロイヤル・ヨルダン航空、米の電子機器禁止に神対応

◇ ◇ ◇

出回った映像が衝撃的だったこともあり、ユナイテッド航空にとっては悪夢のような炎上事件となっているが、火はまだ消えそうにない。なかでも大きな火種は、人種差別問題だろう。

今回の騒動はアメリカ国外でも大きく報じられているが、引きずり出されたデイビッド・ダオが中国・ベトナム系だったことから、とりわけ中国で大きな話題となっている。「人種差別ではないか!」というわけだ。しかも、中国側での騒ぎの底流には中国人の黒人差別意識もあるようだ(参考記事:ユナイテッド機の引きずり出し事件に中国人激怒、の深い理由)。

いずれにせよ、今回のような暴力的な乗客引きずり出し「事件」が、二度と起こらないことを願いたい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ウクライナ首脳、日本時間29日未明に会談 和平巡

ワールド

訂正-カナダ首相、対ウクライナ25億加ドル追加支援

ワールド

ナイジェリア空爆、クリスマスの実行指示とトランプ氏

ビジネス

中国工業部門利益、1年ぶり大幅減 11月13.1%
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中