最新記事

米中関係

「トランプ大統領」を喜ぶ中国政府に落とし穴が

2016年11月22日(火)11時00分
ジェームズ・パーマー

グローバル経済の両翼

 そもそも人権問題でトランプ政権から圧力をかけられる心配すらないかもしれない。トランプはイラクのフセイン元大統領からロシアのプーチン大統領まで独裁者をたびたび称賛し、外交での孤立主義を主張している。新疆ウイグル自治区での(さらに香港でも)中国による弾圧に目をつぶる可能性がある。

 第4にメディアの信憑性をめぐる勝利。新聞各紙がこぞってトランプを批判した結果、欧米メディアはエリート主義で偏向報道だらけ、と主張する中国国営メディアは勢いづくはずだ。

【参考記事】トランプが大統領でもアジアを手放せないアメリカ

 ただし中南海の祝勝ムードに水を差しかねない大きな不安材料が1つある。皮肉にも中国の成長には、強く、安定し、繁栄するアメリカが、世界との貿易に前向きであることが欠かせない。20年までに全国民を貧困から脱出させ、適度に繁栄した「小康社会」にするという夢を実現するために、外国の市場が必要。そのために、グローバル化は極めて重要なカギとなる。

 トランプが公約どおり保護主義の道を突き進み、かつて多くの事業を破綻させたのと同じまずい決断を下せば、中国経済はいま以上に揺らぐはず。果たして現代版シルクロード経済圏構想の「一帯一路」で埋め合わせできるかどうか。よく言われるように中国とアメリカはグローバル経済の両翼。片方が駄目になればもう片方も道連れだ。

From Foreign Policy Magazine

[2016年11月22日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

鉱物資源協定、ウクライナは米支援に国富削るとメドベ

ワールド

米、中国に関税交渉を打診 国営メディア報道

ワールド

英4月製造業PMI改定値は45.4、米関税懸念で輸

ビジネス

日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中