最新記事

歴史問題

韓国教科書論争は終わらず

2015年11月24日(火)14時28分
シム・ギュソク

 文は金がセヌリ党でやっているように、来年の総選挙に向けて党内を結束させる必要がある。その結果が、17年に文自身が大統領選に出馬したとき影響を与える可能性が高い。

 このため文は、教科書国定化に対する世論の反発をテコに、新政治民主連合と左派全体の足並みをそろえる努力をしてきた。正義党の沈相奵(シム・サンジョン)代表や、新政治民主連合を離党した千正培(チョン・ジョンべ)議員と共同戦線を張るポーズも取った。安哲秀(アン・チョルス)議員ら新政治民主連合内の対立勢力も、国家的論争のために、当面は文への批判を控えている。

 教科書問題は、左派が穏健な有権者の支持を取り込むチャンスにもなった。世論調査によると、穏健な有権者はおおむね教科書の国定化に反対だ。これは来年の総選挙で、大邱など保守派の牙城とされる地域で、新政治民主連合が議席を初めて獲得する要因になるかもしれない。

 気掛かりなのは、選挙や政争は別として、現代史の解釈が今も(そしておそらくこれからも)韓国社会を大きく分断する要因であることだ。韓国では冷戦が永遠に続いている。政治家も国民もその議論に熱中するあまり、社会や経済をむしばむ真の問題が放置される恐れがある。

From thediplomat.com

[2015年11月17日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:中国株に戻り始めた国内投資家、外国勢は慎

ワールド

ニューカレドニア、混乱続く マクロン仏大統領が23

ビジネス

英財政赤字、4月は予想上回る 対GDP比で60年代

ビジネス

日鉄のUSスチール買収、米大統領選後に「粛々と協議
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    「目を閉じれば雨の音...」テントにたかる「害虫」の大群、キャンパーが撮影した「トラウマ映像」にネット戦慄

  • 4

    9年前と今で何も変わらない...ゼンデイヤの「卒アル…

  • 5

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 6

    高速鉄道熱に沸くアメリカ、先行する中国を追う──新…

  • 7

    服着てる? ブルックス・ネイダーの「ほぼ丸見え」ネ…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 10

    「韓国は詐欺大国」の事情とは

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 10

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中