最新記事

アフリカ

【写真特集】見たままのコンゴ、ありのままのアフリカ

著名写真家のパオロ・ペレグリンとアレックス・マヨーリが切り取った日常

2015年10月2日(金)12時43分
Photographs by Paolo Pellegrin and Alex Majoli

2012, CONGO - MAJOLI / PELLEGRIN / MAGNUM PHOTOS

 コンゴと聞いて、何を思い浮かべるだろう。そもそも「コンゴ」には、コンゴ民主共和国(旧ザイール)とコンゴ共和国とがあり、隣り合ったこの中央アフリカの2国を明確に区別できる非アフリカ人はそう多くないだろうし、どちらかというとコンゴ民主共和国(旧ザイール)のほうが――内戦やエボラ出血熱などネガティブな報道ばかりだが――ニュースで耳にする機会があるかもしれない。

 そうでないほう――つまり西側に位置し、面積がより狭く、ブラザビルを首都とするコンゴ共和国のイメージとは、どんなものだろうか。

 共に写真家集団マグナムに所属する著名な写真家であるパオロ・ペレグリンとアレックス・マヨーリが、タッグを組んでこの国を写真に収めた。それぞれの作風を組み合わせ、さらには実験的に抽象化とコラージュを採り入れ、出来上がったのが260ページの大判写真集『コンゴ(Congo)』だ。

 淡々と切り取られた、日常の風景や人々の暮らし。個々の写真に説明は一切ない。眼前に付きつけられる写真は、何の偏りもなく、ペレグリンとマヨーリが見たままのコンゴだ。

 高名な小説家であり詩人、ジャーナリスト、現在はカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で文学を教えるアラン・マバンコウは、コンゴ出身だ。本書に文章を寄せた彼は、ペレグリンとマヨーリが「都市や村で人々と生活を共にし、喜びと悲しみを共有し、川を渡り、ゴミ箱を乗り越え......このプロジェクトの期間、完全にコンゴ人になっていたはずだ」と書く。

 この『コンゴ』プロジェクトには原点があると、ペレグリンは説明する。2004年に彼とマヨーリは、トーマス・ドボルザック、イルカ・ウィモネンと一緒に「オフ・ブロードウェイ」と呼ばれるプロジェクトに携わった。彼ら4人がフォトジャーナリストとしてニュース雑誌向けに撮った過去の作品から、個々の写真説明と明確なストーリーテリングを省き、新しい物語へと編集し直したのだ。

 その手法を今回も採用し、課題を事前に設定することなく、純粋でランダムな発見を求めて撮影に臨んだペレグリンとマヨーリ。「私たちはより自由に写真を追求することができた」と、ペレグリンは言う。

 その結果、ドキュメンタリー写真という表現の可能性を指し示し、コンゴという国の調査研究ともなった。「都市のシーンから奥深い森林まで、今日の大半のアフリカ社会のありさまを映し出して」いるとマバンコウは評している。

 先入観なく思い描くイメージは、コンゴだけでなく、現代アフリカのイメージでもあるのかもしれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元カレ「超スター歌手」に激似で「もしや父親は...」と話題に

  • 4

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 9

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 10

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中