最新記事

メディア

AP通信が手に入れた世界最速の記者

執筆する記事の本数は従来の10倍以上。コンピューターが自動執筆する記事がビジネスニュースを変える?

2014年7月1日(火)16時54分
アリシア・ペレス

不眠不休 データをまとめて記事にするアルゴリズムを導入したAP通信 Adrees Latif-Reuters

 AP通信といえばアメリカの放送局や新聞社の協同組合。だがその記事の多くは今後、人間の手によって書かれたものではなくなるかもしれない。同社は7月から、企業の四半期決算のニュースはコンピューターが自動で執筆した記事で配信するという計画を発表した。

 記事執筆に利用されるのは、ノースカロライナ州ダラム市に拠点を置くオートメーテッド・インサイツ社が有する「ワードスミス」という、ビッグデータを自動で分析して1つのストーリーにまとめる技術。AP通信はオートメーテッド・インサイツの出資者でもある。

 計画では、投資情報サービスを手掛けるザックス・インベストメントリサーチ社が提供する情報をオートメーテッド・インサイツの人工知能技術で分析。ビジネスニュースを人間の記者が書く必要がなくなり、「ワードスミス」が自動で執筆できるようになる。さらには配信する四半期決算関連の記事の本数も、現在の300本から4000本以上に増やすことが可能になるという。

 これによって記者は、関連するフィーチャー記事の質の向上に集中できるようになる。AP通信は、この技術の導入で記者は「自らの担当分野の記事を書いたり、ネタ元を発掘したりすることに多くの時間が割けるようになる」とする。「顧客に向けた企業の決算報告書関連の分析記事も今までの10倍に増やせる」

 AP通信ビジネスニュース担当の編集主幹ルー・フェラーラは、今回の技術導入によって人員削減が行われることはないとしている。代わりに記者が書く記事は「数字が何を意味しているか」にフォーカスする。「決算報告を伝える際にトレンドを見極め、独占的な情報記事を書いて提供する」ことに集中できるということだ。

 AP通信がこうした変革を行ったのは今回が初めてではない。フェラーラによれば、スポーツの記事の多くは数年前から自動で執筆されている。たとえば昨年からは、NFL(全米プロフットボールリーグ)の順位表が自動配信化されている。しかもオートメーテッド・インサイツの自動情報分析技術を使い、「その週の選手たちの成績を説明する文章も含まれる」という。

 こうした記事が配信される前には、人間の目でチェックが入るという。それでも同社は、バグなどの懸念がなくなれば記事の自動配信化をさらに推し進めていく方針だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国で「南京大虐殺」の追悼式典、習主席は出席せず

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット

ビジネス

アングル:トランプ関税が生んだ新潮流、中国企業がベ

ワールド

アングル:米国などからトップ研究者誘致へ、カナダが
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 5
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 6
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 7
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    「体が資本」を企業文化に──100年企業・尾崎建設が挑…
  • 10
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中